9月23日(金)織田邦男・元空将は、国家基本問題研究所企画委員会において、『尖閣の空は守れるのか』と題して、櫻井よしこ国基研理事長をはじめ理事、評議員、企画委員らと意見交換をした。
氏は1974年、防衛大学校を卒業し航空自衛隊に入隊、F4戦闘機パイロットなどを経て83年米国の空軍大学へ留学。92年米スタンフォード大学客員研究員、99年第6航空団司令などを経て、2006年航空支援集団司令官(イラク派遣航空部隊指揮官)、2009年に航空自衛隊を退職された元空将である。現在三菱重工の顧問であるとともに、安全保障の専門家として言論活動などを活発に行っている。
氏は、まず尖閣諸島で対峙する中国という国を分析し、「二人のカール(マルクスとクラウゼヴィッツ)」を愛する国という表現を使い、相手は「力の信奉者」なのだと強調する。特に、ここ28年間で軍事費を44倍にするなど、大軍拡を強行するばかりか、「不戦屈敵」の名のもと三戦、サラミスライス戦術を着々と実行している実態を指摘。ただし、海域では海警対海保というグレーゾーンでの駆け引きが存在するが、空域ではいきなり空戦になる危険があり、昨今の情勢はそのことを端的に示しているとのこと。
さて、外国の対領空侵犯措置(対領侵)の事例としてトルコ空軍が2014年にシリア軍機を、2015年にロシア軍機を撃墜していることを挙げ、対領侵で侵犯機を撃墜することが国際社会の非難を受けることはないし、これが国際社会の常識であると指摘した。
他方、航空自衛隊の対領侵の根拠法である自衛隊法には、第84条に任務規定があるのみで権限規定が存在しない。その意味するところは、任務遂行のために武器を使用することを実質的に放棄することなのだと指摘。このような状態のままでは、尖閣諸島の上空を空自の戦闘機が守り切れるのかという不安が大いにあると警鐘を鳴らした。
(文責 国基研)