北朝鮮は「核爆発によるEMP(電子パルス)攻撃能力を手にした」と威嚇、我が国の対策が問われている。
●北のEMP攻撃で甚大な被害も
元来、EMPは落雷によって電子機器が使えなくなる状況と同じである。EMP防護のためのスペックを、保有している電子機器に加えるとなると莫大なコストが必要になるが、簡単な防護方法は落雷同様、コンピューターの電源を抜く、あるいは携帯の電源をOFFにすれば良いだけの話である。
しかし、作戦行動を行なっている部隊は、そうはいかないので、指揮・管制・通信機能に障害を受ける。米軍は、そのための研究を自国の核実験によるEMPがハワイに影響を与えた1962年以降、行なってきており、防衛省も来年度の概算要求では「EMP弾に関する研究」として14億円計上している。
本研究は敵の作戦行動を妨害するのが目的で、「併せて防御技術に関する検討を実施」することになっている。サイバー防御も、サイバー攻撃を研究しなければ有効な防御体制は採れない。それが、筆者が繰り返し「専守防衛は機能しない」と主張する所以で、9月4日付の「今週の直言」でも『概算要求に見られる防衛意識の低下』と題して書いた。
●急がれるレーザー迎撃の研究
EMPを発生する核爆発の前に当該弾道ミサイルを撃ち落とすには、プーストフェーズ(発射直後の上昇段階)で攻撃するのが最も良い。イージス艦の迎撃システムでは、発射直後から追尾することが難しいので、高出力レーザーシステムで撃ち落とすのが望ましい。米軍は1980年代から航空機搭載のレーザー兵器を開発し、10年程前に地上発射試験に成功したものの配備は先延ばしにされている。
防衛省も遅ればせながら来年度予算の概算要求で「高出力レーザーシステムの研究」として87億円を計上している。
米国は1991年、少数民族クルド人保護のため国連決議を根拠としてイラク北部に飛行禁止区域を設定し、これに反するイラク軍をイギリスやフランスとともに空爆した。
北朝鮮による予告なしの弾道ミサイル発射は、民間航空機や漁業活動等にとって危険極まりない。人道的措置として「発射禁止区域」が設定できないものか。ただ、これに実効性を持たせるには、禁止区域に予告なしに発射された弾道ミサイルは、確実に撃墜できることが前提となる。その際、高出力レーザーは有効な手段となる。日米の技術協力が威力を発揮すべき時である。