公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.10.06 (金) 印刷する

韓国と日本は核武装でも共助を 洪熒(元駐日韓国公使)

 韓国は、中国、ロシアに、いまや北韓(北朝鮮)が加わって、隣接するアジア大陸3カ国の核攻撃の脅威にさらされている。韓国は国連によって1948年8月に誕生した。しかし、この新生国はわずか2年後の1950年、侵略を受ける。いわゆる朝鮮戦争である。東西冷戦の枠組みを決定づけた国際戦だった3年間の激戦によって韓半島は廃墟となった。韓国の抹殺を狙ったこの戦争を共謀した主役は、いま韓国に対する核攻撃能力を持っている前述の3カ国の指導者たち(スターリン、金日成、毛沢東)だった。
 韓国は米国が主導した国連軍の助けを得て、共産主義の侵略を退けた。1953年7月に休戦が成立したものの、戦争は冷戦化して64年目の今も続いている。共産陣営全体の標的になった韓国が生き残る道は米国との同盟だった。韓米同盟は東アジアを共産主義から護る礎だった。

 ●限定的な米国の「核の傘」
 米国は同盟国を護るため「核の傘」を提供してきた。だが、米国の「核の傘」は、限定的にのみ機能する不完全なものであることが確認された。中国は1980年代以降、世界的な対米戦略の次元で核兵器を拡散させた。北韓側の核武装の野望が国際社会に広く知られてからすでに27年が経った。
 韓国は韓半島の非核化のため平和的に最善を尽くし、北側の核武装を阻止するため国際社会の協力を訴えてきた。しかし、米国と国際社会の北の核を阻止する努力は、中国のサボタージュのため失敗してきた。金正恩がいよいよ米本土を攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成すれば、米国が韓国、日本に約束してきた「核の傘」は機能しなくなるというのが専門家たちの一致した見解だ。
 国連安保理の常任理事国でもある中国は、25年前に韓国と国交正常化をしたが、今もなお平壌側の後ろ盾だ。習近平は、中国が1950年10月に韓国を侵略したことを正義の戦争と言い、韓国は中国の属国だったと言い放った。専門家なら周知の事実だが、北の核問題の本質は中国(中国共産党)である。中国は北側の核を除去する考えはなかった。
 中国は、韓国に、米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」が配備されることに激しく反対している。反対を超えて韓国に対して卑劣な報復措置をとり、韓米同盟の破棄まで要求している。中国は急速に増強させている軍事力を使って周辺地域を支配しようとしている。中国共産党と金正恩は、韓国と日本の共通の同盟国である米国をアジアから駆逐しようとしている。中国は大韓民国の敵だ。

 ●侵略の意図隠さない金正恩
 親類まで虐殺する金正恩は、韓国に対する核攻撃を公言してきた。金正恩は、米国が北側の核施設を攻撃すれば、その報復としてソウルを火の海にする、つまり韓国国民を大量虐殺すると宣言している。この暴悪極まりない狂人を制圧、除去することは韓国民の正当防衛だ。
 現在、弾道ミサイルの攻撃を完全に防ぐ軍事的、技術的な方法はない。韓国が金正恩の核ミサイルを防御する武器を持つことにすら反対する中国は、韓国と日本を狙った弾道ミサイルを満州地域に大量展開している。いま展開されている、そして今後も増え続けるはずの中国と北側の弾道ミサイルを防ぐ防御体制を構築するためには、天文学的な予算が必要だ。韓日は根本的な対策が必要だ。こちらも彼らにミサイル防衛のための天文学的な投資を強いるべきだ。
 「ロウソク革命」という民衆クーデターで権力を掌握した文在寅集団は、「親北-親中-反日-反米-反韓」の路線を堅持している。文在寅は、10年前に北側に当時の韓国の国防予算4年分に相当する天文学的な支援を宣言した、盧武鉉と金正日間の「10.4宣言」の立案者だ。文在寅・主体思想派政権は、反逆勢力でかつ歴史の反動勢力だ。いま、韓国は怠惰な民主主義が野蛮な独裁体制を積極的に打倒しなかったため高い代価を払っている。

 ●攻撃の意思挫く現実的手段
 韓国社会も日本と同様に核武装の議論はタブーだった。だが、北側の核ミサイル脅威だけでなく、中国が韓国の敵であることが明白になり、韓国民の3分の2ほどが独自の核抑止力の保有に賛成するようになった。ウクライナは核兵器の放棄により侵略を招いたとされる。いわゆる専門家やマスコミは、こうしたウクライナでの事態を教訓に、金正恩は核兵器を絶対放棄しないはずだと言う。だが、ウクライナ事態から教訓を得なければならないのは韓国も同じだ。
 文在寅は、韓国の核抑止力保有に反対するが、絶対多数の韓国国民は国家の運命を敵の慈悲心に任せるつもりなど毛頭ない。今、外交や「平和的方法」を主張する者らは、臆病者か「従北・親中勢力」だ。敵に譲歩する者は自由と権利を持てない。敵に攻撃の意思を断念させる積極的かつ現実的な手段が必要だ。
 独自の核抑止力の確保を支持する多数の常識人たちは、韓国の核武装は日本の核武装をも意味することを理解している。そして中国と平壌側の核共助に対抗するため、韓国と日本も戦略的に共助することが望ましいと考えている。
 ソウルと東京が、1945年8月の広島と長崎のようになってはならないと考える韓国の愛国右派は、韓国と日本が消極的、守勢的な姿勢から抜け出し、自由民主体制を否定する中華覇権主義から文明とわれわれの未来を護るため一緒に戦わねばならないと思っている。