公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2018.02.19 (月) 印刷する

三浦瑠麗氏のNPR認識は疑問だ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 米国防総省が先ごろ公表した「核態勢の見直し(NPR)」について、国際政治学者の三浦瑠麗氏が、2月14日付の産経新聞「正論」で、「日本政府が今般の見直しを拡大抑止の強化だとして歓迎したのはおかしい」と書いている。
 その理由として氏は、NPRの背景には「海外へのコミットメントに疲れた米国政治の本音が色濃く反映されている」と指摘し、「圧倒的な通常兵力による日本防衛への関与を下げたい米国政界の本音が窺える」と述べている。
 筆者は彼女と面識はないが、知る限りでは、米政府が「海外へのコミットに疲れた」兆候もなければ、「通常兵力による日本防衛への関与を下げたい」と考えている節も見られない。むしろ、今月公表された米予算教書では、人員も通常兵力も増強すると表明している。
 現に今月6日には「デューイ」と「スタレット」の米イージス艦2隻が米西岸から日本に回航されている。

 ●「過去例なし」は理由にならず
 三浦氏は昨年4月にも自身のブログで北朝鮮危機に触れ、「米国が核保有国を先制攻撃したことは過去一度もないという歴史的事実」から「米国の側からの先制攻撃はない」と主張している。だがこれは、以下の情報からも疑問だ。
 米軍筋によれば、在韓米軍は昨年11月、米朝戦争のシミュレーションを行ったが、結果は米軍が戦術核を使用してわずか15分で決着がついたという。最初は半信半疑であったが、米国防総省がNPRの中で、低出力核を先制使用する意志を示したことで、このシミュレーションの現実味は一気に増した。
 一昨年10月初め、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)用のエンジンテストを行ったが、その直後の6日に米軍は、B-2爆撃機に核爆弾B61を搭載して飛行させたことを敢えて公表している。日本のメディアは、この事実を全く報じていない。
 過去20年、北朝鮮は核と搭載弾道ミサイルの開発で凄まじい進展を遂げてきたが、米軍もまた核弾頭を精密に誘導する技術を飛躍的に向上させてきた。その代表がB61-12だ。
 この精密誘導が可能で低出力の新型核爆弾の開発により、北朝鮮の核や弾道ミサイル、長射程砲などについて、放射能拡散を極限化して瞬時に壊滅させることができるようになった。昨年9月、マティス国防長官は「ソウルを危険に晒さずに北を攻撃できる」と発言しているが、背景には、こうした理由があったと思われる。
 これなら親北の文在寅大統領も韓国軍を北上させる必要はない。昨年5月、ティラーソン米国務長官は「38度線を越えて米軍は北上しない」など「4つのノー」を発表した。そのことからも米軍の低出力核爆弾による先制攻撃は現実味を帯びている。

 ●スリーパーセル解釈でも疑問
 三浦氏は最近も、北朝鮮のスリーパーセルに関する発言で批判を受けているようである。平時は眠った振りをして市民生活にまぎれ、有事に起き出して後方を撹乱する北朝鮮工作員が日本国内にも多数いることは確かである。しかし、彼等の任務は在日米軍基地での破壊活動にあり、氏が指摘するように「とりわけ大阪が危険」と言うことはない。認識には誤りがあるように思うので、あえて付記した。