13日の「ろんだん」で「中国の情報戦に鈍感すぎる日本」を書いたが、中国政府肝煎りの文化機関「孔子学院」や中国製の通信機器によるスパイ活動が疑われていることについて、米国内で警戒と批判が広がっている。
日本時間の14日に行われた米上院情報委員会において、マルコ・ルビオ上院議員が「孔子学院や、華為(Huawei=ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)といった中国メーカーの通信機器が米国内でスパイ活動を行っているのではないか」と質したのに対し、コーツ米国家情報長官は、「ルビオ議員の懸念を共有する」と答えた。
また、「中国からの留学生、特に科学・数学分野といった先進的なプログラムを学ぶ学生が米国の国家安全保障に及ぼすリスク」に関するルビオ氏の問いかけに対し、米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は「彼等は中国政府の為に米国の情報を秘密裏に収集している可能性がある」とし「中国社会全体が米国の脅威となっている」と警鐘を鳴らした。
●中国製通信機器は「生間」「内間」
前稿で『孫子の兵法』には5つのスパイ行為があると紹介したが、その中で「孔子学院」は、地元に根を張る「郷間」であると書いた。それに倣えば、中国製の通信機器は、じっと敵地で生きながらにして情報を齎す「生間」にあたり、それが政府機関で使用されるようになれば、敵の内部まで入り込む「内間」になる。
この「内間」を阻止する為、7日にルビオ上院議員とコットン上院議員が連名で、HuaweiやZTEといった中国製通信機器を米政府が購入・リースすることを禁止する法案を提出したことは前回書いた。
一方、米ニュース専門局CNBCが13日伝えたところによると、米中央情報局(CIA)、FBI、米国家安全保障局(NSA)など6つの米情報機関が、一般市民に対してもHuaweiやZTE社製のスマート・フォンを使用しないように勧告を出し、「生間」を阻止しようとしている。
●留学生任せの翻訳に問題ないか
早速、中国の政府系メディア「環球網」は14日、レイFBI長官の発言には反発が広がっていると報じ、中華系全米アジア人団体は「レイ長官の発言は不正確かつ侮辱的」と反論した。
日本では、中国人はじめ外国人留学生が、アルバイトで「論文の英訳承ります」と広告を出している模様であるが、翻訳の過程で技術情報が盗まれないという保証はない。理工系の大学では中国人留学生はかなりの数に上る。日本企業も安易に翻訳を外注する傾向にあり、注意が必要だ。インテリジェンス・リタラシー(知識・能力)の欠如を示してはいないか。