公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2018.05.28 (月) 印刷する

NHK特集の悪質な印象操作 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 5月19日に放送されたNHKスペシャル「日本の諜報 スクープ 最高機密ファイル」を見た。端的に言えば「防衛省情報本部の電波部が個人のインターネット内交信までを監視している。日本の情報によって他国が武力行使を行えば、武力行使を禁じた日本国憲法に違反する可能性がある」とする内容である。しかし、この番組は専門的な知識に乏しい素人が作成したとしか思えない、悪意に満ちた印象操作番組であることを指摘したい。

 ●専門的知識ないまま制作か
 まず番組ではTop Secretという英語を「最高機密」と訳しているが、インテリジェンスに関する専門的知識を多少なりとも持っている人であれば、秘密区分に「最高機密」などという区分はなく「Top Secretは極秘、 Secretは秘、 Confidentialは取扱注意」しかないことに直ぐ気づく。秘密区分のことを解っていないタイトルの付け方からしても、素人が作成した劣悪番組であることが判る。
 情報本部電波部が秘密のベールに包まれているかのような番組作りにも印象操作の疑いが強い。世界どの国でも電波情報を扱う機関を大っぴらにしている国などはない。番組は「何をやっているかわからない」と語る匿名の防衛省職員の音声を流していたが、防衛省はホームページで電波部の業務内容や組織を明示している。そこには担当領域として番組が図示した「海外の情報、安全保障」などと言う言葉はない。仮に番組が示した「海外の情報」が正しいとすれば、国民のインターネット交信まで監視しているとする番組内容と矛盾しているのではないか。
 さらに日本の情報により他国が武力行使をすることが憲法違反かどうかに関しては、安保法制やその前の周辺事態法策定の時代から論議されて既に結論は出ている。NHKは番組に登場させた憲法学者に「議論を詰めていく必要」を語らせているが、まったく理解に苦しむ。

 ●ワイドショー化するNHK
 5月25日夜のNHKニュースは、国の存続に影響を与える米朝首脳会談の行方よりも、アメリカンフットボールの悪質反則事案の方を優先していた。
 筆者は、よく海外出張してNHKの海外放送を見ることがあるが、内容の何とつまらないことか。こんなことに強制的に徴収される受信料を使わせて良いものか、と常に思っている。政府のプロパガンダ機関となっているロシアや中国、北朝鮮などの国際報道は別としても、せめてイギリスのBBCを始めとする欧米主要テレビ並みには国家にとって重要な報道ができないものか、と常に思う。