矢板明夫・産経新聞外信部次長は、11月9日、国家基本問題研究所の企画委員会にて、米国中間選挙と安倍総理訪中の結果を受けて、これからの米中、日中関係の展望を語り、その後櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。
氏はまず、米国中間選挙は上下院でねじれ状態が生じ、トランプ大統領の政権運営に厳しい結果となったが、対中政策では大きな変化がないと予想する。米国経済にとって大きな影響が出ていないからである。
その一方、中国経済は株価が約2割下落、ドル元レートも下がり、大豆に関税がかかり豚肉価格が上昇するなど、中国国民生活に直接的影響が出てきている。習近平政権は人民の不満が政権批判に繋がることを一番恐れるわけで、このままの状態を放置するわけにはいかないだろうと分析した。
次に、安倍総理が10月25~27日に訪中した成果として、歪んだ日中関係の是正や韓国、北朝鮮への牽制などのプラス効果が出ており、マイナス面では米国との信頼関係に影響が出る可能性などを指摘した。前者の例としては、10月30日に「朝鮮人戦時労働者(徴用工ではない)」に関する韓国最高裁判決が出たにもかかわらず人民日報が一切論評しなかったように、これまで中韓が共同で反日攻勢をかけてきた構図が崩れつつあるなど、対日融和姿勢の一端が見えるとした。後者の例として、「第3国への民間経済協力」が、中国の「一帯一路」に加担しない日米の足並みを乱しかねず、注意が必要だという。
これからの中国の対日外交上の課題は習近平主席の訪日になると見る。その時、新しい天皇陛下と最初の国賓としての会見を望むだろうし、日中間で(1972年の田中訪中以来)第5の政治文書を締結しようとするかもしれない。中国側は、様々な形で独自の用語を盛り込もうとするだろう。例えば、「人類運命共同体(=習近平思想)」「新大国関係(=中国が主導する両国関係)」「主権領土の保全(=台湾独立反対)」「自由貿易(=中国型)」などで、いずれも中国の思惑が内在する要注意の文言であるという。
今後、米中の関係は、緊張と緩和を繰り返しながら、貿易・金融の問題、ウィグルを始めとする人権問題などで軋轢が継続していくと予測する。わが国は、中国の対日融和姿勢のこの機会を逃さず、日本人スパイ容疑者の早期返還、北朝鮮拉致問題の前進、尖閣諸島沖の海警の問題等で攻勢をかける必要があるとした。
(文責国基研)