原子力ビジョン研究会のメンバー4名が8月30日、国家基本問題研究所を来訪し、定例の企画委員会で、我が国のエネルギー安全保障が重要な政策課題であるということが広く認知されていないことや、抜本的な原子力開発体制の見直しの必要性などについて語り、企画委員らと意見を交換した。
原子力ビジョン研究会は、原子力開発の当初から関連事業に直接かかわってきた当事者が、現在の原子力開発体制に危機感を抱き、なんとかしたいという思いから有志が集まって結成した。
メンバーの共通認識は、日本のエネルギー安全保障は重大な局面にあるということ。わが国を地政学的に見た場合、島国、無資源、自然災害多発という特徴がある。その上、脱炭素化の時代の流れの中、再生可能エネルギー利用は限定的であり、理屈の上では原子力利用が不可避である。化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼り、自給率は再生可能エネルギーを含めてもわずか4~6%に過ぎないという。
にもかかわらず、現状では国として原子力開発を主導する姿勢が見られない。
その原因は、福島第1原発事故を教訓として今後の体制に生かそうというのでなく、臭いものには蓋をするだけで、国家のエネルギー安全保障全体にとって、今後どうあるべきかという根本的議論が蔑ろにされていることにある。賛否両論あって当然で、その上で、安心で安全な原子力利用のため、事業者をはじめ、政府、自治体、地元住民を巻き込んだ「原子力安全文化」を創出していくことが、重要な点である。
安全は、経験とノウハウを積み上げて達成されるもので、自動車運転免許のように、単純な合否判定を出して、「はい、安全です」となるものではない。そのような点からいえば、現在の原子力規制は、審査のあり方に疑問を感じざるを得ないとのこと。審査という理由だけで、原子力施設を長期間停止させ、その間の損失をすべて国民に負わせているのだ。
最後に、わが国のエネルギー問題を考えたとき、国民の多く(サイレントマジョリティー)は、「電気が無ければ困るけど、原子力は何となく嫌だな」という意見が多いと聞く。連日のようにメディアが原発反対を報じ、それに異を唱えることが出来ない空気が醸成されているからかもしれない。やはり、そのような中、勇気をもって正論を主張できるのは、国であり政治家ではないか、と強く訴えた。(文責 国基研)