明治神宮権禰宜の伊藤守康氏は、12月27日、国家基本問題研究所の定例企画委員会でゲストスピーカーとして、「異文化の人に伝える神道~その壁と可能性~」と題して語り、その後、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見を交換した。
伊藤氏が在籍する国際神道文化研究所では、異なる宗教団体や国内外の学術機関との交流を通して、神道文化の理解促進や、異文化交流を行っているとのこと。
明治神宮では、たびたび諸外国のVIPに対し、神宮境内から社殿での参拝まで案内しているが、その時感じることは、御祭神のことを説明することの難しさだという。一神教を信ずる外国人には、八百万の神の存在自体が恐怖の対象であったりする。また、明治神宮は明治天皇を御祭神としているが、天皇を神格化していることが、軍国主義の象徴であるとの見方をする人も、少なからずいる。
このような、負のイメージが喧伝される一方、いまなお年間1000万人以上の参拝者があり、その半数は外国人という実態も事実である。たとえば、掛けられた絵馬を見ると、そこには、英語、タイ語、中国語、スペイン語、アラビア語など、様々な外国語が散見される。
神社本庁に登録された神社の数は8万社あり、全国のコンビニ数5万店よりはるかに多い。このことを外国人に説明すると、多くは感嘆の声を漏らす。
人種に関係なく、多くの人は、神社の敷地に足を踏み入れると、空気が変わるのを感じるという。それは、古くから、日本人が自然と一体となった生活の中に、神性を見出してきたことと関係する。人間は自然の中で生かされていると感じる畏怖(Awe)の気持ちをもてば、すべての事象が感謝(Gratitude)の対象となる。
このようなことは、洋の東西、宗教の違いを超えた、ある種の真理ではないかとし、神道には人類共通の普遍性があることが、最近、国際的にも理解されるようになってきたとも語った。
【略歴】
東京生まれ、神戸育ち、京大法学部出身で平成5年に外務省入省。カナダやパキスタンでの勤務経験を持ち、平成15年より明治神宮に奉職。明治神宮権禰宜としてのお務めの傍ら、明治神宮国際神道文化研究所の国際事業課長として活躍中。