元衆議院議員の松田学氏は10月2日、国家基本問題研究所の企画委員会において経済問題について語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと幅広く意見を交換した。冒頭、同行した千代田行麿・日本賢人会議所副理事長が、自身の勤務経験で得た教訓を紹介し、その後、松田氏の経済対策の具体論へと話が進んだ。松田氏の発言内容は概略次のとおり。
まず、現在の世界経済の潮流を知ることが重要。情報技術は急激に進展しており、通貨の概念も劇的に変わりつつある。
例えば、現在、日銀や欧州中央銀行(ECB)など6つの中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)の発行が計画されているが、これは、中国のデジタル人民元や米フェイスブック社(FB)のデジタル通貨「リブラ」に対抗した動きである。決済をめぐる国際的な環境は激変しつつある。
デジタル通貨は、デジタル変換された通貨の総称で、前払い式の電子マネー(PASMOなど)、法定通貨を基準としない仮想通貨(ビットコインやリブラ)、法定通貨をデジタル化した中銀発行デジタル通貨(CBDC)などに分類される。これが普及すれば既存の送金サービスは高くて遅いという利用者の不満は解消される。
他方、使用記録(ログ)が残ったり、その他の個人情報管理の面でリスクを抱えたりする。中国のデジタル人民元はジョージ・オーウェル的監視社会という危険を内蔵することから注意が必要だ。
このことを踏まえれば、ブロックチェーン(ネットワークに接続した複数のコンピューターがデータを共有するプラットフォーム)で行う経済活動(スマートコントラクト)が容易に展開できる。すると決済上の様々な弊害が除去され、地域格差の無い利便性の高い経済社会実現の可能性が広がる。
特に日銀等が検討しているCBDCではなく、政府が法定暗号通貨(デジタル円)を発行することにより、デジタル情報とリンクできるので、マイナンバーの利便性が飛躍的に増加する。加えて、デジタル円を流通させ、日銀保有の国債の償還を政府暗号通貨で行えば、その分の国の債務は貨幣に転換される。つまり政府債務の解消が期待されるのである。
【略歴】
1957年京都府生まれ。1981年東京大学経済学部を卒業、同年大蔵省(現財務省)に入省、2012年衆議院議員、2015年東京大学大学院客員教授などを歴任。現在、松田政策研究所代表で、国基研の客員研究員でもある。主な著書は、『いま知っておきたい「未来のお金」の話』(2019年、アスコム)、『米中知られざる「仮想通貨」戦争の内幕』(2019年、宝島社)など多数。
(文責・国基研)