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2021.08.25 (水) 印刷する

アフガン崩落招いたバイデン「外交安保チーム」 島田洋一(福井県立大学教授)

 バイデン大統領の頭にあるのは「大政治家たる自分が大向こうを唸らせる演説を行う」光景だけなのかも知れない。

米軍がアフガニスタン撤退を急ぐ中、タリバン支配の恐怖から国外脱出を急ぐ人々が首都カブールの空港に殺到し、いまなお大混乱が続いている。バイデン氏としては完全撤退させた状態で、同時多発テロ20周年に当たる9月11日の演説に臨み、10月から執行が始まるバイデン政権として最初の予算に「アフガン戦争の費用は1セントも入っていない」と来年初頭の一般教書演説でも胸を張りたかったところだろう。だが、その思惑は裏切られた形だ。

そうした「夢」ないし政局スケジュールゆえに、最重要拠点のバグラム空軍基地を今年7月に「予定通り」アフガン政府に引き渡すなど、米軍の「機械的な」引き揚げが続いた。そのことも、タリバンが想定外のスピードで攻勢を強める結果を招いた。

致命的だったバグラム基地放棄

いまアフガニスタンからの脱出用に使われているカブール国際空港は滑走路が1本なのに対し、米軍が早々に放棄したバグラムの滑走路は2本。ここを確保していれば、アフガン政府軍に上空援護(air cover)を提供できると共に、はるかスムーズに国外避難作戦を展開できたであろう。

バグラム空軍基地は、アフガニスタン北東部にある首都カブールから更に北東約40キロに位置する。中国やロシア、パキスタンとの国境にも近い。その意味でも戦略的重要性は大きい。ここは米中央情報局(CIA)の根拠地の一つでもあった。

2011年にアルカイダの首領オサマ・ビンラディンの殺害作戦を実行した海軍特殊部隊シールズも、バグラムで最終準備を整えた。すなわちテロリストに対する攻撃作戦の策源地でもあった。そのバグラム空軍基地はいま、タリバンの手に落ちている。

早まった放棄は大失態というのが、アメリカの安保専門家らのほぼ一致した意見である。情勢を見つつ大統領に軌道修正を進言する、見識と力のある側近や幹部がいなかったことも今日の破滅的混乱を招いた。

「バイデン政権はプロ」は幻想

米FOXニューズなどに頻繁に登場する私の知友フレッド・フライツ安全保障政策センター理事長(元国家安全保障会議=NSC事務局長)は、憲法上更迭できない「下卑た道化師」(buffoon)に過ぎないカマラ・ハリス副大統領はともかく、ジェイク・サリバン大統領安保担当補佐官、アントニー・ブリンケン国務長官ら「三流の人材」(third-stringers)や大統領に何の影響力も持たないロイド・オースティン国防長官らは直ちに更迭すべきだと論じている。

民主党にも、クリス・クーンズ上院議員やエリオット・エンゲル前下院外交委員長、ミシェル・フルノイ元国防次官ら能力を持った人材はいる。彼らに外交安保政策の補佐役を担わせるべきだとの趣旨である。

トランプ前政権と違ってバイデン政権は「プロ」が中枢部を固めているので安心だと説く「識者」が日本にも少なからずいたが、そうした幻想からは早く脱却せねばならない。