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国基研ろんだん

2022.08.22 (月) 印刷する

国の為に戦う人の率最低はGHQの所為 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

8月13日の産経新聞に「戦争になった場合、あなたは国のために戦いますか」という問いへの回答に関する国際比較が掲載された。日本は「はい」という答えが群を抜いて低く、13.2%で世界最低であった。

筆者は昭和62年(1987年)の『防衛白書』執筆担当であった際、「国民と防衛」の章で各国の現状を比較する企画を行った。その結果、諸外国は憲法に「国防の義務」を明記しており、それを記述していない日本国憲法が国防意識の低さをもたらしているとの結論を得た。

諸外国憲法は国防義務を明記

産経新聞の比較表では、国のため戦う人の率が最高なのは中国で約90%、次いでスウェーデンやフィンランドといった北欧の国家が続く。

昭和62年『防衛白書』にも記述してあるが、中国は憲法第55条に「祖国を防衛し、侵略に抵抗することは、中華人民共和国のすべての公民の神聖な責務である。法律に従って兵役に服し民兵組織に参加することは、中華人民共和国公民の光栄ある義務である」と明記されている。スウェーデンでは義務兵役法により、18歳から47歳までの男子は軍務に就くよう規定されている。フィンランドは憲法第75条で「フィンランド国のすべての国民は、祖国防衛に参加し、あるいはこれを援助する義務を有する」と規定している。

米国憲法の前文でも「共同の防衛に備え」とうたい、韓国でも憲法第37条に「すべての国民は、法律が定めるところにより、国防の義務を負う」と明記されている。

これと比較して、戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が起草した日本国憲法の前文では「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とされている。ここからは国防の義務といった観念が生ずる道理がなく、国のために戦う人の率が世界最低なのは当然の帰着と言える。

教育勅語や武道も止めたGHQ

GHQは明治23年(1890年)に発布された「教育に関する勅語」も廃止したが、その中には「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」(万一危急の大事が起こったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて公共のために)という項があり、義務教育の「修身」の授業ではこれを繰り返し教えた。

一方で教育勅語が発布される前、1863年の薩英戦争や下関戦争でも日本人は外国勢力と勇敢に戦っているが、これは、忠節や武勇を倫理徳目とする「武道」の教えによるものであろう。

この教育勅語や武道をGHQは戦後廃止してしまった。米主要紙ワシントン・ポストは先月、「米国は日本が軍を正当化する動きを支援すべきだ」とする社説を掲載したが、有事に戦おうとしない日本人を育成した元凶はGHQを主導した米国なのだ。

しかし問題は、独立を回復して70年以上経っても、GHQの足跡を消し去らない日本にある。独立回復後「武道」は復活した。またGHQの統治下で制定された教育基本法も、第2次安倍内閣の平成18年(2006年)に改正され「国を愛する心」が盛り込まれた。しかし現行憲法との関係で「国防の義務」までには踏み込めていない。現憲法を改正しなければ国のために戦う人の率がいつまでたっても世界最低であり、来る台湾有事すなわち日本有事に有効な対応が取れないことは明らかである。(了)
 
 

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世界価値観調査で「国のために戦う」と回答した割合が中国の9割に対し日本は13%と先進国中最低。中国憲法は国防を神聖な責務とし、多くの国では憲法で祖国防衛義務を謳うが、日本国憲法には防衛義務が欠如。日本をこんな国にした憲法は速やかに改正し教育を立て直すべし。