9月29日、国基研(JINF)は、インドのビベカナンダ国際財団(VIF)と共催で台湾のプロスペクト財団(PF)を加えた国際セミナーをオンライン形式で実施した。
テーマは『中国の強圧的な活動を背景としたインド太平洋の新たな戦略的環境』。時差の関係から合計2時間という時間的制約もあり、発表者はそれぞれから1名ずつとした。
まず、VIF側アルビンド・グプタ所長が開会挨拶で、故安倍元総理への哀悼の言葉を述べた。特にVIFと安倍氏とは様々な会合を通じ特別な思いがある。インド太平洋地域の概念を発展させた多大な功績を称賛し、ご逝去は大変残念であるとした。
それを受け櫻井理事長は、先の国葬儀においてインド及び台湾が示した心からの弔意に対し感謝の言葉を述べた。安倍氏の遺志を引き継ぎインド太平洋の安全保障を確実にするため、日印台の協力を深化させることが共通の利益になると指摘、今後も意見交換の機会を増やしていこうと応じた。
台湾プロスペクト財団(PF)代表の賴台忠会長は、安倍氏への弔意とともに対中戦略を強化していくためには地域の協力が欠かせないと強調した。
引続くセッションは、まず日本側を代表し、国際基督教大学上級准教授で国基研企画委員でもある近藤正規氏がプレゼンテーションを行った。冒頭、地域の政治状況について、ロシアのウクライナ侵攻に対するインドの反応、米ペロシ下院議長の台湾訪問、安倍元総理の暗殺などを概観。その後日印や日台の経済と安全保障を含めた協力関係の現状と課題に触れ、最後にネルソン・マンデラの「何事も成功するまでは不可能に思えるもの」との言葉を引用し、挑戦し続けることの重要性を強調した。
続く台湾側は、国防安全研究院の沈明室所長が発表した。ロシアのウクライナ侵略に重ね合わせるように台湾海峡に危機が迫る現状を概観。ウクライナと台湾は全く異なる環境ながら、米国はウクライナの時より明らかに台湾を防衛する姿勢を示している。加えて、日本は従来の後方支援のみの受け身の姿勢から積極的な姿勢が期待できるが、未だに現役軍人同士が情報交換できないのは残念とした。
インド側は、アショク・カンタ元駐中国大使が発表した。習近平政権の示す台湾に対する最近の強圧的姿勢を概観し、ウクライナ危機の教訓として米国の支援が大きなポイントになったように、台湾に対しても米国の関与が重要だとの認識を示し、QUADの重要性に言及した。更に、日本は東シナ海を防衛するだけでなく、台湾海峡により軍事的に貢献することが必要とした。
閉会の辞でインド側は、QUADの安全保障機能を強化して抑止効果向上を期待し、台湾側は、インドや日本との更なる直接的な協力強化を望み、最後に櫻井理事長が「台湾有事は日本の有事」として、今後のお互いの協力の可能性並びに対話の継続を希望し、会議を終えた。