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国基研ろんだん

2022.11.14 (月) 印刷する

沖縄に事実上入港できない海自艦 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

11月10日から19日までの予定で、今年最大の日米共同演習キーン・ソードが実施されている。陸海空自衛隊員約2万6000人と米軍約1万人が南西諸島を舞台に大演習を行う。

10日に海上幕僚監部の幹部から「沖縄の港湾に入港できなくなるような雰囲気になっている」との話を聞いた。沖縄の港湾施設を管理する部署に入港申請を出しても「岸壁が開いていない」とか「もやい(岸壁に係留するためのロープ)を取る作業員がいない」といった理由で断られるという。

そう言われてみると、筆者も35年間の現役海上自衛官時代に沖縄へ入港したことが何度かあるが、全て米海軍が管理するホワイトビーチを利用した。沖縄の本土復帰後、駐留自衛官の子供達がいじめられたり、成人式に自衛官が制服で参列できなかったりしたことがあったが、未だに自衛隊に対する嫌がらせが行われていることを知って胸が痛む。

演習支援に後ろ向きの知事

やはり筆者が現役時代に、沖縄の海中で第2次大戦中の不発弾が発見され、海上自衛隊に処分要請があった。この時、海自側が水中処分隊員を乗せた掃海艇を、事故や故障に備えて3隻派遣したいと回答したところ、沖縄県は「新たな基地をつくることにつながるので1隻にして貰いたい」と3隻の入港を拒否した。掃海隊司令は「3隻派遣しなければ任務を達成できない」と派遣要請を断った。この結果、沖縄の海中には不発弾が溜まっていき、安全な漁業がままならなくなったことから、沖縄県はついに3隻の掃海艇を受け入れざるを得なくなった。

今回の日米共同演習でも、玉城デニー沖縄県知事は「基地の過重な負担につながることは到底認められない」と主張して、演習の支援に後ろ向きである。

邦人救出にも支障

台湾有事に際して、沖縄県の離島に住む邦人の救出は絶対に必要である。一義的には民間フェリーで救出する計画であるが、民間船の「徴用」は憲法違反(昭和56年3月14日参議院予算委員会における角田礼次郎内閣法制局長官の答弁)であることから、民間には原則として「依頼」するだけである。

依頼された民間フェリー会社が戦下での邦人救出を危険と判断して協力を断った場合には、海自艦が救出せざるを得なくなるが、普段から沖縄の港湾を利用して訓練を実施しておかなければ、いざという時にスムーズな救出活動はできない。ホワイトビーチは米海軍の管轄であることから、一般の民間人は入ることができないのである。

沖縄県民のためになる訓練実施を、県は拒否するのだろうか。(了)

 

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