沖縄戦終了から80周年の6月23日前後、テレビの番組は戦争体験者の「戦争は絶対やってはいけない」とする声を収録した「不戦」の特集が多く、この傾向は終戦80周年の8月に向けてますます高まって行くであろう。
だが我が国が直面しているのは沖縄県の尖閣諸島を奪おうとする中国であり、核弾頭を搭載できる弾道ミサイルを日本海に撃ち込んでいる北朝鮮であり、中国と軍事協力をして北方を脅かすロシアの存在である。「戦争は絶対にやってはいけない」と唱えるだけで、祖先から受け継いできた領土や主権を奪われることがあって良いのか。
国民に届かない安保環境の実態
6月24~25日にオランダのハーグで行われた北大西洋条約機構 (NATO)首脳会議では、加盟国が防衛費と関連支出の合計を2035年までに国内総生産(GDP)比5%に引き上げる決定を行った。米国のレビッド大統領報道官は26日、これをアジア太平洋地域の米同盟国や友好国にも求めた。しかしアジア太平洋地域最大の米同盟国である日本は、今日の厳しい安全保障環境が一般国民に、そして国家の意思決定を行う政治家に正確に届いているとは言い難く、従って正しい情報が届かないことによる政治判断で「自主的」に決められる日本の防衛費が歪められる恐れがある。
先日、鹿児島の水交会(海洋安全保障に関する調査研究活動を推進するとともに海上自衛隊への協力支援や先人の慰霊顕彰などの幅広い活動に取り組む公益財団法人)に講演に呼ばれた。「米国ではCIA(中央情報局)やインド太平洋軍が、2027年に中国は台湾に侵攻するとの想定に基づいて準備している」ということを喋ると、聴衆は「そんなことを聞くのは初耳」とばかり「石垣島に家を購入してしまった」等の反応があった。すなわち厳しい安全保障環境の実態が国民に届いていないのだ。
戦わずして国は守れない
日本は数千年の歴史を通じて、祖先の人たちによって育まれてきた。日本の国土、主権、そして言語を含む文化や伝統を継承していく義務が、今日を生きる国民に課されているはずだ。
中国は香港、台湾はおろか、沖縄県から鹿児島県奄美群島までもかつて自国領土だったと主張する「国恥地図」を持ち、「中華民族の偉大な復興」をスローガンに「失地」奪回を企図している。これらの領土が中国共産党の支配下に入り、中国語を母国語とされても良いのか。祖先から受け継いだ領土や主権を守るためには「不戦」でなく、それを奪おうとする国と「戦う」以外にないではないか。(了)