金融商品は基本的に自己責任であり、リスクを伴うことを事前に了解すべきであろう。しかし、これは契約対等の原則が働く場合を想定した正論であり、販売業者が金融機関である場合、事情が異なる。
すなわち、顧客である中小企業は資金繰りを金融機関に依存し、借り入れの際の審査に神経を砕いている。金融機関の御機嫌を損なえば、財務状況の芳しくない中小企業は借り入れをストップされる弱みがあるのである。
このような関係の下で、金融機関の営業(為替デリバティブ取引の勧誘)を無碍(むげ)に断ることはできないであろう。それをネット取引が主流となった株式取引やFX取引等と同列に置き、全て「自己責任」と言うことはできまい。
この問題の本質は、貸し渋りや貸し剥がしといった、金融機関のあり方が問われる問題と同じなのである。経営破綻しても税金で救済される金融機関が、自己の優越的地位を利用し、中小企業に金融商品を売り付け、手数料収入は確保し、後は中小企業の自己責任だとは、あまりに大局観のない言草である。金融は産業の血液である。殖産の母であるべき金融機関が、子である企業を食いつぶしている構図が垣間見える。