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2011.10.07 (金) 印刷する

「使用済み原子燃料のリサイクル 日本の再処理の意義」 大和愛司 日本原燃株式会社副社長

日本原燃株式会社の大和愛司 代表取締役副社長は10月7日、国家基本問題研究所で「使用済み原子燃料のリサイクル 日本の再処理の意義」について語り、同研究所企画委員と意見交換した。この中で質問が集中した原燃のトラブルを中心とした大和副社長の主な発言要旨は次の通り。

原燃のトラブルは、マイナーなものが圧倒的に多いです。誤解を避けるため、通常はマイナーという言葉は使いません。何か問題があったらすべて解決して次に進むという形をとります。例えば、ある課長への報告が行われずに、そのまま上司に報告されていたということになると、保安規定違反になります。

こういう初歩的なミスについても一つずつ根本原因に遡って対応をとりますので、どうしても時間がかかることをご理解いただきたいと思います。工場本体の設計についてはほぼフランスの技術を導入し、日本で作り、日本人が動かすという仕組みをとっています。フランスも本体の試運転に関しては高く評価してくれています。

ガラス固化技術について

もう一つ、時間がかかっている原因にガラス固化施設の問題があります。当初海外の技術を含め比較検討し、議論の末、大型化の容易さ、炉の寿命などから日本の技術を使うことになりました。

実廃液を用いた試験を開始した以降、流下性の問題や温度制御の問題が確認され、それらの問題を克服するために東海村のモックアップ施設(実物とほぼ同じだが放射能を使わない設備)を使って、長期にわたる試験を行い、その結果、炉内の温度を十分に把握し、温度をコントロールすることが決め手になることが確認されました。

このため複数の温度計を追加設置する工事、温度のコントロール方法の改善、内部の予測シミュレーションの高度化など多くの改良を加えました。現在、ガラス固化は自信をもってやれる状態になっていますが、3月11日の東日本大震災で中断したままの状態です。

さらに言及すると、ガラス固化技術は元々、国際共同研究で開発し、これを旧動燃の東海ガラス固化技術開発施設に設置しました。この成果を六ヶ所ガラス固化施設に技術移転したものですが、原子力では基本的に実証された技術を採用しますが、技術移転は施設のハードのみならず技術を持った人間も同時に移転することによりうまくいきます。

フランスでは国の原子力庁(CEA)が傘下の研究所で開発した技術をAREVA社に移転する時、開発に携わった人を含めて移転します。それによって技術の継続性が保証されます。このような仕組みを日本でもこのときに行うべきだったと思います。

配管の漏洩について

再処理工場の配管の総延長は約1300kmもあります。漏洩があったのは使用済み燃料の受け入れプールで発生しました。私が平成16年に着任した頃、地元の元村長から「プールでなくザルを作ったのか」、とお叱りを受けたことがありました。

プールの内側にはステンレス製のライニングが施されていますが、現場の工事中に寸法が足りず、ちょうど隅のところだったもので、うまくついていなかったため、溶接作業者が板を付け足し、不適切な溶接をしました。それが発端で漏洩が発生しました。

徹底的に調べたところ、漏洩は数ヶ所でしたが、不適切な部分は二百数十ヶ所もあることが判明しました。ステンレスの溶接は有資格者でないと出来ない基準になっており、しっかりした溶接がなされていたはずなのです。その「はず」が下請け、孫受け、曾孫受けとなるにしたがって、チェックが不十分となってしまい、あってはならない大変な失敗になってしまいました。

この大きな反省に立って、補修工事を行うとともに全社品質保証体制の再構築を図りました。溶接作業を含めすべての工事の方法などについて現場第一線の作業員まで品質保証計画を徹底し、浸透させるため、下請けにいたるまで責任者がチェックし、記録をとる体制に変えました。その後、プールでは漏洩などは一切起きていません。

(文責 国基研)

発言要旨PDFはこちらから