公益財団法人 国家基本問題研究所
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TPP

2011.11.24 (木) 印刷する

WTOとFTAで十分 岩崎良二

 「アジアの成長を取り込む」―。まじないのように語られるこの空疎なスローガン以外に、環太平洋経済連携協定(TPP)加盟のメリットがあるのか。
 日本をはじめ、米国はもちろんアジアのほとんどの国が世界貿易機関(WTO)加盟国である。これにより自由経済は守られ、関税の低減化が推奨され、主要な国内産業は何とか保護することができる。準自由経済の枠組みは担保されているのである。
 アジアの成長を取り込むのが真の目的ならば、円高こそが最大の障壁である。我が政府のアリバイ的為替介入、日銀の消極的金融緩和こそが、いま議論されなくてはならない大問題ではないか。
 TPPとは所詮、米国の国内問題のしわ寄せであり、じり貧の米国経済と失業率、オバマ大統領の輸出倍増計画と選挙、 域内化する世界経済における孤立感、リーマン・ショック以降の金融セクターの不振、これらを一挙に解決するため、アジアにテコ入れし、その主導権を手中にするのが米国の目的である。
 日本はWTOと自由貿易協定(FTA)で十分やっていけるのである。アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)は中国やインド、インドネシアなどの動きを見ながら決めればよい話である。
 いまTPPに加入しなければ米国に「主導権」を奪われるとの議論がある。主導権の意味は不明である。TPPは国内の規制、文化や慣習までをも根絶やしにするヴァンダリズム協定であり、そもそも主導権を喪失させることが目的ではないか。これまでの経済協定とは、全く異なるTPPの傍若無人さを国民は知るべきである。