環太平洋経済連携協定(TPP)の賛否は、日米の経済および戦略的同盟関係に影響を及ぼす重大事項である。公益財団法人としての研究所である国基研の果たすべき役割は、その趣意書にのっとり、慎重に情報を収集し、日本の国益にかなった意見を提言することである。
その前提で考えると、もしもこのまま日本が米国の傘下における無条件で恒久的な安全保障を望むということであれば、参加はやむなしとの考えになるであろう。
一方で、「独立自尊の国家の構築」を目指すのであれば、いつかは米国の傘下から親離れし、「普通の国」として「日本に真のあるべき姿を取り戻す」必要がある。今、TPPへの参加を容認するのであれば、国益が損なわれると判断される時や条件があった場合は(今すぐか、数年後かは分からない)、毅然と米国の設けた席を立てる布石を何としてでも打っておかねばならない。それが外交交渉というものである。
私はここで個人的な賛否を表明しないが、関税自主権は明治の先人や小村寿太郎など気概のある外交官の血と汗によって手に入れた権利である。その重みを十分に踏まえ、国基研趣意書からつながる理路整然とした議論をもって日本の行くべき道を示すべきである。
日本の未来は日本人自身が決める。他国の意に完全に沿う外交はない。TPP問題はその信念で立ち向かってこその国家的課題である。