2019年3月の記事一覧
相撲道と武士道精神 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
大関昇進伝達式で、貴景勝は「武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず」と述べ、記者会見でも「勝って驕らず負けて腐らず」と語った。これまで、外国人横綱の中には品性に欠けたり、立場にないのに手拍子の音頭をとったりする関取がいた中で、久々に「これぞ相撲道」と思わせる言動である。 ●山岡鉄舟の修身二十則 幕末に武士道精神の権現であった山岡鉄舟は、修身二十則を自らに課したが、その第1...
求心力の低下が露呈したEU 冨山泰(国際問題研究者)
欧州連合(EU)とその主要加盟国が中国の影響力拡大への警戒を強める中で、有力加盟国の一つであるイタリアが中国台頭の象徴である「一帯一路」構想への参加を正式に決めたことは、EUの求心力低下を世界に印象付けた。手続きで難航する英国のEU離脱を待たずとも、国際政治におけるEUの存在感の後退は覆い難い。 ●対中政策で分裂する加盟国 EUの執行機関である欧州委員会は3月12日、対中政策の戦略文...
海保と海自は共用性を確保すべきだ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米海軍のイージス駆逐艦カーチス・ウィルバーと沿岸警備隊の巡視船バーソルフが、3月24日、台湾海峡を通過した。米海軍の艦艇が台湾海峡を通過するのは昨年10月以降、毎月行われているが、沿岸警備隊の巡視船が加わるのは初めてである。米国の軍艦と巡視船は、同じ指揮・管制・通信・情報システムであるため、同じ戦術ピクチャー(状況図)を共用することができる。弾薬・燃料・階級章に関しても同じであるが、海上自衛隊と...
【韓国情勢】戦犯企業ステッカーに反対する声も 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
韓国京畿道の道議会が、道内の小・中・高校の校内にある日本製品に「戦犯企業製品」というステッカーをつけることを義務づける条例案を通そうとしている。韓国政府の調べで戦時労働者を使ったとされた日本企業約300社の製品が対象という。 それに対して韓国のマスコミでも反論が出ているし、京畿道教育庁も「不適切」という見解を出した。韓国保守派のニュースサイト「趙甲済ドットコム」にも3月21日に会員から厳しい...
疑問だらけのワンセグ訴訟判決 髙池勝彦(弁護士)
テレビを視聴できるワンセグ機能付きの携帯電話を持つとNHKと受信料契約を結ばなければならないかどうかが争われた4件の上告審で、最高裁は3月12日付で、契約義務はないと訴えた原告側の上告をいずれも退ける決定を下した(産経新聞3月14日付)。 このワンセグ訴訟は、地裁レベルでは、さいたま地裁、水戸地裁、千葉地裁松戸支部、大阪地裁、東京地裁の5件の訴訟があり、最初の平成28年8月26日のさいたま地...
日朝首脳会談で「全拉致被害者」は帰らず 荒木和博(拓殖大学海外事情研究所教授)
安倍総理は日朝首脳会談に前向きなようだ。米朝交渉が合意せず、行き場を失った北朝鮮が日本に助けを求めてくるという構図は、平成12年(2000)6月の金正日・金大中の南北首脳会談以後、平成14年(2002)9月の日朝首脳会談で金正日が拉致を認め5人が帰って来たときと同じだ。官房副長官としてそこに同席していた安倍総理としては、その再現を目指したいのだろう。 もちろんそれが実現し、拉致被害者が帰って...
習政権の内外政策は挫折含み 冨山泰(国際問題研究者)
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)開催に合わせて、米国有数の中国専門家エリザベス・エコノミー氏が、習近平政権の内外政策の行き詰まりを端的に説明する論文を外交専門誌フォーリン・アフェアーズ(電子版)に発表した。同氏は「(習近平国家主席が進めた)強すぎる党統制は経済の停滞と社会の不満を招き、一方で強すぎる野心は習主席の新世界秩序の構想を歓迎した多くの国の熱意を冷ました」と書き、習主席の強権...
成長減速でも軍拡続ける中国 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
今月5日に開幕した中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で、2019年の国防費は前年実績比で7.5%増の1兆1898億7600万元(約19兆8000億円)になると報告された。18年の伸び率(8.1%)は下回ったものの、依然、GDP成長率目標(6〜6.5%)に比べるとかなり高い。そうした批判を意識してか、早速8日の中国英字紙チャイナデイリー(電子版)には「中国軍事支出は他国に脅威を与えない...
【韓国情勢】存在せぬ歴史づくりに疲れる韓国 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)
「趙甲済ドットコム」は、韓国保守を代表するジャーナリスト趙甲済氏が主宰するニュースサイトで、韓国保守派の拠点の1つである。このたび、筆者から趙甲済氏に「日韓関係が良くないこのような時期だからこそ、韓国保守派の声をそのまま日本に紹介したい」と申し入れたところ、同サイトの記事を訳載して構わないと快諾をいただいた。 今回はその第1弾として、韓国の国史編纂委員会が通説を覆す研究成果「三・一運動の参加...
印パ紛争から中国の国柄を考える 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
米朝首脳会談に世界の目が注がれる最中、インドとパキスタンが、ともに領有権を主張しているカシミール地方で戦闘機同士の空中戦を展開するなど軍事的緊張が高まっている。先月上旬、インドのビベカナンダ国際財団とのセミナー開催のため訪印した国家基本問題研究所の代表団は、これに先立ってモディ首相の国家安全保障顧問を務めるアジット・ドバル氏とも面談した。 そのドバル氏が、トランプ米政権のカウンターパートであ...
反省無き米国の対北宥和論者 島田洋一(福井県立大学教授)
2月27日の産経新聞朝刊に、アメリカの元朝鮮半島和平担当大使ジョセフ・デトラニ氏のインタビュー記事が載った。ちょうどベトナム・ハノイで2回目の米朝首脳会談が始まったタイミングであり、米国の北朝鮮問題「専門家」の平均的思考を知る上で興味深い。 デトラニ氏は20数年の米中央情報局(CIA)勤務を経て、六者協議担当特使、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)米国代表などとして北朝鮮の核問題に関わっ...