公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

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2021年4月の記事一覧

 オーストラリア連邦政府は、ビクトリア州が中国と結んでいた巨大経済圏構想「一帯一路」に関する協定を破棄すると発表した。「一帯一路」に基づく協定は、スリランカ、カンボジアなどの発展途上国、およびインフラストラクチャへの資金提供を切望している多くのアフリカやラテンアメリカの諸国との間で交わされているが、「債務の罠」とも言われ、豪政府は、近年、中国共産党の浸透に対して厳しい方針を取っている。 ビク...

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 「村上春樹氏有力」との予想に反して、カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞したしばらく後に、国際政治学者の袴田茂樹氏が「芸術性とは無関係だが」と前置きして、「イシグロ文学は歴史の不条理を浮き彫りにしている」と簡潔に評したことがある。(産経新聞2018年1月16日) 袴田氏が喝破したもの 袴田氏は、イシグロ氏の初期3作品である『日の名残り』、『浮世の画家』、『遠い山なみの光』を取りあ...

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 中国で2013年に引退した温家宝前首相(78歳)が、亡くなった母を偲ぶ「私の母親」という文章をマカオの週刊紙『マカオ導報』に寄稿した。3月25日から4月15日にかけて、4回にわたって掲載するという力の入れようだったが、中国大陸の新聞には掲載されず、ネットメディアなどに転載されたものの、すぐに削除され、中国版LINEの微信(ウィーチャット)などのSNSでの発信もできなくなった。 前首相は寄稿...

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 東芝の車谷暢昭社長兼CEOが4月14日、突然、辞任した。後任には前社長の綱川智・会長が復帰したが、事実上の解任と見られている。 東芝は4月6日に英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズから買収提案を受け入れていた。車谷氏は三井住友銀行時代に辣腕バンカーとして知られ、東芝に移る前はCVC日本法人の会長を務めていた。車谷氏は古巣のCVCを使って東芝を非上場化することで自らの地位を守ろうとし...

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 米ソ冷戦は、「欧州正面」が両陣営の主戦場であったが、現下の米中新冷戦は「アジア正面」が主戦場になる。欧州正面の最前線は東西ドイツであったが、アジア正面の最前線は台湾であり、台湾有事は連動して日本の有事になる。中国共産党が日本の尖閣諸島を「台湾の一部」と決めつけている以上、尖閣奪取に動いて先島諸島が戦火に見舞われる可能性が高くなるからだ。 歴史的な対中方針の明確化 バイデン米大統領が就...

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 菅義偉首相は4月13日、「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議」で、福島第一原子力発電所で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含んだ処理水について、政府を挙げた風評被害対策を前提に2年程度の準備期間を置き、海洋に放出すると表明した。昨年8月に経産省の有識者らによる小委員会から「海洋放出が現実的」との報告を受け、国際原子力機関(IAEA)からも科学的根拠に基づく措置と評価を得ていた。 筆者は...

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 東京五輪開会式の7月23日は中国共産党創設100周年だが、その1週間前の7月16日は中露善隣友好協力条約の締結20周年に当たる。期限20年の同条約はこの日で期限切れとなり、中露は条約を修正して延長する方針だ。日本外交に悪夢となる「中露軍事同盟」はなさそうだが、事実上の「準同盟」に再編される可能性がある。 プーチン訪中で首脳会談 3月22日に中国・桂林で行われた中露外相会談の目的の一つ...

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 政府は3月26日、自衛隊施設周辺や国境離島など、安全保障上重要な土地の取引を調査し、外国資本の不適切な利用が明らかになれば規制するという土地利用規制法案を閣議決定した。今国会で成立させ、2022年度からの施行を目指すという。 これまでの政府の対応と比べると、大きな一歩を踏み出したといえるが、法案作成に当たって、公明党が「私権の制限」「経済活動の制限」につながるとして慎重な姿勢を見せ、結果、...

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 3月29日に開かれた防衛省とのオンライン会議で中国国防部は日本側に「一連の中国に関するマイナスの振る舞いに強烈な不満と深刻な懸念」を伝えるとともに、2月1日に施行した中国海警法について「中国の正常な立法活動で、国際法と国際慣例に完全に合致している」とする中国外務省報道官の説明を繰り返したという(4月1日付産経新聞)。 海警法の問題点については、すでに多くの指摘があるが、なかでも外国公船に対...

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