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2021.04.14 (水) 印刷する

7月の中露条約〝刷新〟が要注意 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)

 東京五輪開会式の7月23日は中国共産党創設100周年だが、その1週間前の7月16日は中露善隣友好協力条約の締結20周年に当たる。期限20年の同条約はこの日で期限切れとなり、中露は条約を修正して延長する方針だ。日本外交に悪夢となる「中露軍事同盟」はなさそうだが、事実上の「準同盟」に再編される可能性がある。

プーチン訪中で首脳会談

3月22日に中国・桂林で行われた中露外相会談の目的の一つは、条約の取り扱いにあり、双方は「締結20周年を共に祝い、条約の精神を発揚し、より深いレベルで中露新時代の全面的な戦略協力パートナーシップを推進していく」ことで合意した。

「戦略パートナー」関係を盛り込んだ条約は2001年、プーチン大統領と江沢民国家主席が調印。両国関係の基本条約となってきた。条約は一方が破棄を通告しない限り、5年間自動延長される。公表されていないが、プーチン大統領が7月に訪中し、首脳会談で条約延長を打ち出す可能性がある。

実は欧米から包囲されるロシアは、条約を軍事同盟に近い形に格上げすることを望み、中国側に打診したとの情報がある。プーチン大統領も昨年秋、「中国との軍事同盟は理論的に可能だ」と述べていた。

しかし、中国国防省報道官は3月初め、「中露は同盟を結ばない原則を維持する」と述べ、ロシアとの同盟を否定した。

中国に同盟のメリットなし

中国にとって、ロシアとの軍事同盟はメリットが少ない。北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)を敵に回すことになり、生命線である欧米との経済関係に大打撃だ。

中国は経済力が中国の10分の1程度のロシアを格下とみなし、放置していても中国に接近してくるとみなしている。「太子党」の習近平国家主席は若い頃、中ソ対立をめぐる指導部の苦悩を目撃し、ロシアへの不信感があるとの見方を香港紙が書いていた。

とはいえ、中露関係は20年前の条約締結時より、政治、経済、軍事面で極めて緊密になり、バイデン米政権の反中・反露外交に対抗し、一段と結束を強めている。

現行の中露条約は、軍事的な相互義務を負わない「準同盟」の関係に刷新されるかもしれない。それだけでも、外交的、地政学的に日本外交には脅威であり、条約の修正に注目すべきだ。1970-80年代、「永遠の中ソ対立」を夢想した日本外務省は、ここでも外交失敗を余儀なくされそうだ。