2024年4月の記事一覧
岸田総理の米国議会演説を斬る 山上信吾(前オーストラリア大使)
4月11日に岸田文雄総理大臣が米国連邦議会の上下両院合同会議で行った演説については、日本のメディアの評価は総じて高いようである。総理一行に同行した記者による記事の中には、米国議会演説では見慣れた光景である「スタンディング・オベーション」が何度も起きたことに感激し、そのことをもって好意的に報じている様な純朴な感想が引きも切らない。 しかし、事は米国議会という日本の首相にとっては願ってもない大舞...
首相演説に欠けた米国人拉致問題 島田洋一(福井県立大学名誉教授)
米連邦議会の上下両院合同会議における岸田文雄首相の演説(4月11日)を聴いていて、明らかに不足を感じた部分があった。拉致問題である。 北朝鮮の拉致に関して岸田首相が発したのは次のひと言のみだった。 「北朝鮮による拉致問題は、引き続き重大な問題です」。簡単すぎるだろう。事情に疎い議員なら、何のことか意味を取り損ねたかもしれない。 米国の上下両院議員を前にしての演説という機会を得なが...
韓国政治のブレをどう見るか 荒木信子(朝鮮半島研究者)
韓国では4月10日投票の総選挙結果が判明し、2027年に予定される次の大統領選挙も視野に入ってきた。日本からすると、選挙ごとに左右に揺れる韓国の政治的ブレが気にかかるが、この現象をどのように見たらよいのだろうか。 一寸先は闇 韓国で政治的なブレはこれまでも激しいものがあった。韓国建国(1948年)以降に限っても、歴代大統領の末期あるいは退任後は平穏と言えなかった。 例えばよく知...
単純労働者の移民は経済効果に乏しい 本田悦朗(元内閣官房参与)
「我々は労働力が必要だったのだが、実際にやってきたのは生身の人間だった」。これはスイスの小説家マックス・フリッシュの言葉であるが、移民問題の本質を突いている。移民の受け入れは、モノやサービスを取引する国際貿易とは本質的に異なり、文化の接触を伴う複雑な課題である。 3月15日に出入国管理及び難民認定法の改正案が閣議決定され、今国会に提出された。それによると、従来、「技能実習」の名の下に外国人実...
トランスジェンダーの不都合な真実 島田洋一(福井県立大学名誉教授)
アビゲイル・シュライアー著『トランスジェンダーになりたい少女たち』が産経新聞出版から出され、ベストセラーになっている。大変、意義深い。 米で成立しないLGBT法案 米議会上院は、民主党が提出したLGBT差別禁止法案(英語の名称は一般的装いをこらした「平等法」)を審議するに当たって、公聴会にシュライアーを公述人の1人として呼んでいる(共和党の推薦)。逆差別を生むとか、性観念の曖昧な児童を...
自衛隊にかみついた朝日の占領軍史観 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
陸上自衛隊の第32普通科連隊(埼玉県大宮駐屯地)が4月5日に硫黄島で日米合同の戦没者追悼式に参加したことをX(旧ツイッター)の公式アカウントで紹介した際、先の戦争を「大東亜戦争」と呼んだのを問題視する記事が7日の朝日新聞デジタル版に掲載された。 筆者は、以下の二つの理由で、大東亜戦争の呼称を問題視する朝日新聞こそ、占領軍に押し付けられた歴史観に立っていると糾弾したい。 政府の正式名称は...
沖縄防衛とシェルター設置の必要性 奈良林直(東京工業大学特任教授)
政府は3月29日、日本への武力攻撃を想定し、住民の避難施設(シェルター)を整備する方針を決めた。沖縄では石垣島など先島諸島の五つの市町村に新たなシェルターを造る計画だ。これに対し、沖縄県の玉城デニー知事は「かねてから『対話による平和構築こそが日本が取るべき正しい外交手段だ』と言い続けてきた。基地の計画ありき、配備ありき、シェルターの建設ありきでは説明は十分ではない。平和であるための取り組みをどうす...
岸田首相は朝日新聞を気にし過ぎるな 有元隆志(月刊「正論」発行人)
かねてから自民党内では「岸田文雄首相とその周辺は朝日新聞報道を気にし過ぎだ」との指摘があった。リベラルで知られる派閥「宏池会」出身の岸田首相として、リベラルメディアの代表格である朝日新聞を意識するからか、自民党の政治資金パーティー問題への対応が長引き、本来やるべき憲法改正などの重要案件への対応が疎かになっているというのだ。その通りであろう。 「道義的責任」追及で一致 首相側近からは東京...