2024年5月の記事一覧
現代戦を国際法の視点で議論することの意義 黒澤聖二(元統合幕僚監部首席法務官)
「作戦と法は軍事行動の両輪である」と、ハリー・ハリス元米太平洋軍司令官が法の意義を基調講演で強調した。これは、国際法を議論する国際会議(米海軍大学主催、第6回アレクサンダー・クッシング国際法会議)が5月14日から17日まで、米東部ロードアイランド州ニューポートにある米海軍大学(以後「海大」という)で行われた際の発言である。確かに昨今の軍事行動には法意識が欠如するものが散見され、国際社会は「法の遵守...
「専守」では防衛できないことが立証された 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
ロシアの侵略に対するウクライナの防衛戦で、これまで北大西洋条約機構(NATO)は欧米がウクライナに供与した武器でロシア領内の目標を攻撃することを認めてこなかったが、最近になってNATO要人がこれを認める発言を始めた。ウクライナの防衛戦で「専守防衛」が効かないことを立証した形になり、日本も国是としてきた専守防衛を見直す契機とすべきだ。 ウクライナのロシア領攻撃容認へ 5月26日、NATO...
台湾海峡は日本の生命線 岸信千世(衆院議員)
5月20日、台湾の総統に民進党の頼清徳氏が就任しました。台湾では2000年以降、2期8年ごとに政権政党が交代しましたが、初めて同じ党が3期連続で政権の舵取りを行います。蔡英文前総統の後に続く頼政権でも、政策の継続に期待が高まっています。 頼氏とは、2016年の訪日時と、2021年に亡くなった安倍晋三元総理の弔問に見えた際にお話しさせていただきました。 特に21年の時は現職の副総統であり...
ウクライナ侵略戦争は反米枢軸を強化する 湯浅博(国基研企画委員兼研究員)
中国とロシアの独裁政権は、米国主導の秩序解体を視野に「包括的戦略的連携パートナーシップ」の深化を掲げた。それは単に、中国がロシアのウクライナ侵略戦争を後押しするだけでなく、ウクライナ戦争が反米枢軸の強化を目指す戦争であることを意味している。 「共通の敵」へ連携 プーチン・ロシア大統領の訪中は、ウクライナ侵略後で3度目の対面による首脳会談となった。昨春のモスクワでの会談は、プーチン氏が戦...
北の核攻撃訓練への危機感が薄い 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授)
5月13日の「今週の直言」(核の威嚇に動じない抑止戦略の構築を)で、織田邦男元空将は、ロシアによる新たな核の威嚇に対して米国防総省、北大西洋条約機構(NATO)、ウクライナ国防省が一斉に非難の声を上げたことを紹介した。そして、わが国も周辺国から核の脅威を受けているのだから、抑止戦略を構築せよと論じた。その意見に全面的に賛成する。 しかし筆者には、強い疑問を感じていることがある。ロシアが戦術核...
ドローン侵入で露呈した国内体制の欠陥 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
海上自衛隊の護衛艦「いずも」をドローンで空撮した動画が中国のサイトに投稿されたことが問題となっている。本件に関してはドローンの「いずも」上空への侵入を許した防衛省・自衛隊に非難の声が上がっているが、見落とされている重要な我が国国防上の欠陥がある。それは、侵入したドローンに妨害電波をかけようにも、さらには自衛隊が運用するドローンを管制しようにも、自衛隊への電波割り当てが限られていることだ。 電...
東京15区補選、テレビは何の役にも立たなかった 瀬尾友子(産経新聞出版編集長)
テレビ報道は何のためにあるのか。今回、民主主義の根幹である選挙を守るために、テレビというメディアは何の役にも立たなかった。 東京15区衆院補欠選挙の期間中、この選挙戦の異常さが毎日、大量に動画でX(旧ツイッター)に流れていた。政治団体「つばさの党」(黒川敦彦代表)の根本良輔候補の陣営によるマイクを使った大音量での不規則発言と至近距離からの罵倒、選挙事務所への執拗な突撃、他陣営が身の危険を感じ...