2024年9月の記事一覧
世界に広がる印僑ネットワーク 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)
世界政治でインド系の活躍が目立ってきた。米国ではカマラ・ハリス副大統領が民主党大統領候補になり、史上初のインド系米大統領が誕生する可能性も出てきた。共和党副大統領候補になったJ・D・バンス上院議員の妻ウーシャ・バンスさん、共和党予備選に出馬したニッキー・ヘイリー元国連大使と実業家のビベック・ラマスワミ氏、ルイジアナ州元知事のボビー・ジンダル氏もインド系である。英国ではリシ・スナク前首相やサジド・ジ...
米中「相互確証破壊」時代の幕開けか―中国ICBM発射 中川真紀(国基研研究員)
中国国防省は9月25日、中国人民解放軍ロケット軍が同日、訓練用模擬弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋公海へ向け発射して成功し、予定海域に正確に落下させたと発表した。中国によるICBMの公海への発射は44年ぶりである。 1980年5月、中国は初のICBMであるDF5を太平洋公海に向けて発射、約9100キロ先の目標海域に落下させた。これにより、中国は米本土へ届く核戦力を手に入れ...
景気回復を条件に金銭解雇を認めよ 本田悦朗(元内閣官房参与)
今回の自民党総裁選で小泉進次郎候補が提案した「解雇規制の緩和」は様々な方面で議論を呼んでいるが、誤解も多い。本稿ではまず、解雇規制の意味を明らかにする。次いで、公正な雇用関係と生産性向上を確保するためには、金銭による解雇を正面から認めるとともに、正規雇用のみを保護するのではなく、雇用条件を個別の契約ごとに具体的に定めることによって正規と非正規の区別をなくすことが有効であると提案する。 整理解...
「非軍」でクアッドの海保相互運用に対応できるのか 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
21日に米デラウエア州で日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会議が開かれ、中国を念頭に海洋安全保障協力の強化で一致し、共同声明では海上保安機関が相互運用性を向上させることがうたわれた。 米豪印3カ国の海上保安機関(沿岸警備隊)が全て準軍事組織であるのに対し、日本の海上保安庁のみが海上保安庁法25条で非軍事組織と定められており、3カ国の沿岸警備隊と有効に相互運用性を向上させられるのか疑...
脅かされる韓国の言論の自由 西岡力(麗澤大学特任教授)
拙著『でっち上げの徴用工問題』の韓国語訳出版によって2021年に本研究所の日本研究特別賞を受賞した韓国のメディアウォッチ代表の黃意元氏が、言論活動を理由に検察に起訴され、一審で実刑判決が出て身柄を拘束され、今、二審で闘っている。 記事を理由に記者を逮捕 メディアウォッチはネット上でニュースを発信するメディアであると同時に、単行本を出版する出版社でもある。そのメディアウォッチは2016年...
南シナ海での中比衝突の背景 中川真紀(国基研研究員)
中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海で、両国の対立が激化している。8月19、25、31日には、フィリピンのパラワン島から約150キロ北西に位置するサビナ礁周辺海域において、中国海警船とフィリピンの沿岸警備隊巡視船および漁業水産資源局公船の間で衝突が発生した。 また、南シナ海をパトロール中のフィリピンの空軍機や漁業水産資源局の航空機に対して、中国軍によるフレア(火炎)の発射も3回確認されてい...
ウクライナ軍の越境攻撃は戦争の行方を変えるか 岩田清文(元陸上幕僚長)
8月6日に、第2次世界大戦以降、初となるロシア領土への地上攻撃を仕掛けたウクライナ軍は、わずか10日間で東京23区の2倍近い約1150平方キロを占領した。ウクライナ領内の同じ広さの土地を今年1月から7か月間かかって占領したロシア軍の進軍速度と比較すれば、まさに電撃戦と言ってもいいだろう。しかし、その後はロシア軍の抵抗もあり、8月末現在の占領地域は約1300平方キロと、戦線は膠着している。ウクライナ...
敦賀2号機の再稼働拒否がもたらす負の遺産―今こそ必要な規制委改革 滝波宏文(参院議員)
福井県敦賀市にある日本原子力発電(日本原電)の敦賀原子力発電所2号機が、原子力規制委員会の1メンバー(石渡明委員)のレガシーづくりのために廃炉にされそうになっている。 規制委は8月28日、敦賀2号機について、原子炉建屋の真下の断層が将来動く可能性を否定できないとして、再稼働の前提となる審査に不合格としたことを示す審査書の案を取りまとめた。原発の再稼働を認めない判断は2012年の規制委発足以来...