現在、河野談話の見直しの動きが強まつてゐる。これ自体は当然のことであるが、これと同時に、いやそれ以上に重要なのは村山談話の取消です。河野談話は慰安婦問題についての事実の捏造であるが、村山談話は、我が国の近現代の歴史の全否定であるからである。
「私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう」、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、・・・疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお侘びの気持ちを表明致します。」「わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、」など一体どこの国のことをいつてゐるのか。
「植民地支配と侵略」といふが、「植民地支配」については、台湾しかない、朝鮮は「併合」であつて植民地ではない。百歩譲つて植民地としよう、また国際連盟の委任統治の南洋諸島も含めるとしよう、どこに「多大の損害と苦痛を与え」たのか、逆ではないのか。「侵略」についても多くの議論のあるところであり、少なくとも対米戦争について侵略戦争であると主張する者は特殊な論者だけである。
河野談話は、官房長官談話であり、村山談話は、総理大臣の談話である。安倍内閣も村山談話を継承するといつてゐるが、このやうな談話を継承するかぎり、我が国は位負け外交から脱却することはできない。
国基研ろんだん
- 2024.09.09
- 南シナ海での中比衝突の背景 中川真紀(国基研研究員)
- 2024.09.02
- ウクライナ軍の越境攻撃は戦争の行方を変えるか 岩田清文(元陸上幕僚長)
- 2024.09.02
- 敦賀2号機の再稼働拒否がもたらす負の遺産―今こそ必要な規制委改革 滝波宏文(参院議員)
- 2024.08.19
- 裁判官主導の社会変革は司法権の逸脱だ 髙池勝彦(国基研副理事長・弁護士)
- 2024.08.05
- F16投入だけで戦況は一変しない 織田邦男(麗澤大学特別教授・元空将)
- 2024.07.22
- 北で秘密資金持ち逃げ事件 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授)
- 2024.07.22
- パクス・アメリカーナの終わり 冨山泰(国基研企画委員兼研究員)
- 2024.07.17
- 防衛白書は現場の苦悩も伝えよ 織田邦男(麗澤大学特別教授・元空将)
- 2024.07.16
- NATOが見据える「戦争の常態化」 佐藤伸行(追手門学院大学教授)
- 2024.06.25
- インドの総選挙と連立政権 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)