2006年10月末、筆者は拉致被害者を「救う会」副会長として、家族会の代表とともにニューヨークの国連本部を訪れ、人権問題をめぐる本会議での議論を傍聴した。
北朝鮮による拉致が未解決であることを強調する日本の国連大使の演説に対し、北朝鮮代表が反論権を行使し、拉致は解決済みであるとまず一蹴した。予想通りの展開である。
北はそこから、「慰安婦」を武器に反攻に転じる。日本こそ「20万人の慰安婦」を拉致し性奴隷にしながら何の補償も行っておらず、それこそが日朝間の未解決の問題だというのである。拉致問題と慰安婦問題の連動を目の当たりにした瞬間だった。
北の反論を受け、日本政府代表部が再反論に立った。ポイントは二つ。①北の掲げる20万人という数字は過大である、②日本政府は繰り返し謝罪と反省の意を表している-。ただそれだけで、日本は慰安婦強制連行などしていない、という肝心の事実には一言も触れない。上記2点も、「反論」というより、相手側の議論に対する「補強」に近い。傍聴席にいて、外交敗北を実感させられた。第三国の代表たちも、「話半分として、日本は10万人ぐらい拉致・性奴隷化したのか」といった印象を持ったのではないか。
現実の日本人拉致と架空の慰安婦強制連行を相殺させる試みに、北はほぼ成功していた。慰安婦問題での「先制降伏」「逃げの反論」という河野洋平的、外務省的姿勢は、拉致問題にも間違いなく悪影響を及ぼしている。
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