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2015.03.10 (火) 印刷する

「一外相」王毅発言と菅官房長官、議会の反応 島田洋一(福井県立大学教授)

 中国の王毅外相が、3月8日の記者会見で、「70年前、戦争に敗れた日本が、70年後、再び良識を失うべきではない」と非外交的表現で歴史カードを振りかざすと共に、示威行為として9月3日に予定する「反ファシズム戦争勝利・抗日戦争勝利70年」軍事パレードに、「すべての関係国の指導者と国際機関を招待する。誰であれ誠意さえあれば、われわれは歓迎する」と安倍首相も、頭を下げるなら来てよいとの意向を示した。
 それに対し、菅官房長官が、「一外相の発言であり、政府の立場でコメントは控える」とコメントした。言い換えれば、「外国の一役人の発言に、日本政府の代表が反応する必要はない。無視しておく」という意味だろう。
 これは正しい対応である。一党独裁国家の中国で重要なのは、共産党内における権力序列であり、行政機関のワンピースである「外相」の位置づけは、日本で言えば外務事務次官に近い。
 菅官房長官は同時に、「わが国の戦後70年間の歩みは民主的で人権を守り、法の支配、国際平和への貢献については普遍だ」と暗に中国の人権抑圧、法の支配ならぬ党(人)の支配、国際秩序の攪乱を批判するごとき発言もしている。
 中国の歴史カードには直ちに「現在カード」で応じるべきで、この点も適切だが、もっと明確な言葉で斬り込んでよいだろう。日本的に抑えた表現では、国際社会に充分意が伝わらない恐れがある。もっとも首相や外相の前に、議会が強く明確な発信をせねばならない。この点、日本はアメリカに比べ、遙かに弱い。