公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2015.04.21 (火) 印刷する

「修正主義」をめぐる必読論考 鄭大均(首都大学東京特任教授)

 「修正主義者」(revisionist)とは誰か。その意味・用法について知りたい人は福井義高氏(青山学院大学教授)の論考(「『慰安婦』『南京』…歴史認識で処罰される恐怖」『正論』平成27年1月号)を読むがよい。
 福井氏によると、「修正主義」とは今日の欧米の知的世界を支配するポスト・マルクス主義者が政治的に正しくないという烙印を押すときの婉曲語であり、それは彼らが「ファシスト」的と見なす思考や行為に対して使われるだけではなく、その脅威に対する抵抗を弱めかねないと見なされる歴史的記述等に対しても使われるのだという。
 なぜ慰安婦=性奴隷説に対する異論が「修正主義」などという汚名を着せられるのか。それは右のような理由によるもので、「修正主義」という言葉で欧米知識人がまず思い浮かべるのは、「今日の米国主導の世界秩序のイデオロギー的基礎である第二次大戦『正史』への異議、特にホロコースト否定論である」ともいう。やはり福井氏による「『性奴隷』誤解を解くカギはトルコに学べ」(『WILL』2014年12月号)も必読の論考である。4月12日、ローマ法王フランシスコが1915年に起きたオスマントルコによるアルメニア人殺害に言及、これを「20世紀最初のジェノサイド」と発言し、それにトルコ政府が強く反発していることは周知の通りである。
 福井氏によると、トルコ・アルメニア間の論争の争点は残虐行為(massacre)の有無にではなく、ナチス・ドイツによるホロコーストのごとき「民族絶滅行為」(genocide)の有無にある。氏はそのことを明らかにするとともに、アルメニア系米国人による本国政府と一体になった過去史糾弾の方法に注目、世界的なトルコ非難キャンペーンに対し、トルコ政府が自らの尊厳を守るためにいかに果敢に闘っているのかを記している。「アジア的野蛮という偏見とソ連崩壊による冷戦終結への考慮なしに、欧米特に米国の慰安婦をめぐる一方的日本非難は理解できない」の指摘も重要である。ちなみに、慰安婦像のあるカリフォルニア州グレンデール市はアルメニア系米国人の多く住む都市である。
 日英独仏の資料を使って「世界の『歴史』最前線」(『正論』連載)を語る福井氏の論考にはぜひご注目を。