安倍首相の米議会演説に反対する在米コリアン団体が、慰安婦問題での日本の対応を批判する意見広告を米紙に掲載するため募金活動を始めたという。
中心になっているのは「カリフォルニア州韓米フォーラム(KAFC)」で、反日歴史戦を使命の一つとする団体である。
今回、安倍首相は首都ワシントンのある東海岸のみならず西海岸も訪問する予定を立てている。彼の地を本拠とする上記コリアン団体としては、存在感を示さねば沽券に関わると、普段以上に熱が入っているわけだろう。
問題は、朝日新聞が「慰安婦報道検証」のため人選した「第三者委員会」の報告書(2014年12月22日)が、この団体の広報担当フィリス・キム氏を「海外有識者」の一人に選び、朝日無罪・保守派有罪論を展開させていることだ。
朝日「第三者委員会」なるものの欺瞞性がまた明らかになったと言える。詳しくは、朝日慰安婦報道に関する「独立検証委員会」報告書(中西輝政委員長、2015年2月19日)の私の担当部分を参照頂きたいが、以下に一部のみ引いておく。
私の知る限り、ほとんどが慰安婦問題で朝日新聞ないし韓国側に近い立場を取る人々である。反日運動団体の幹部すら含まれている。しかも、これらの対象に、「朝日新聞の取材網」(すなわち朝日の記者だろう)にインタビューさせたというのであるから、まずこの時点で二重のバイアスが掛かっている。
……さらに「第三者委員会」報告における問題は、インタビューの全記録が公開されず、林氏が独自に取捨選択した以下のような断片のみが「抜粋して列記」されている点である。それぞれが誰の発言なのかも明らかでない。繰り返すが、ここでの「有識者」には韓国系反日団体の幹部も含まれている。記録のため、「抜粋」の全文を引いておこう(以下、ここでは全文でなく一例のみ引いておく)。
・(吉田証言を報じた記事によって)日本のイメージが変わったとは思わない。むしろ、慰安婦問題の今の論争の方が日本のイメージに影響を与えている。安倍政権が、強制連行の有無や性奴隷という表現、軍の直接的な関与の有無にこだわるのは本当に愚かな(stupid)ことだ。河野談話を見直さないと言いながら、閣議決定で否定するようなことをするのも愚かなことだ。安倍さんの考えを外交官に実行させようとする動きは、日本の名誉を回復するどころか日本の評判を悪化させている。
これら発言者不明の「抜粋」に基づいて、「第三者委員会」の林香里委員は次のように総括している。
インタビューした人たちは、主に英語圏で活動する知日派の知識人として知られており、いずれも日米韓の国際関係に影響力をもつ専門家である。……彼女/彼らが「慰安婦問題が日本のイメージを傷つける」というとき、吉田清治氏に代表される「強制連行」のイメージが響いているのではなく、日本の保守政治家や有識者たちがこの「強制性」の中身にこだわったり、河野談話について疑義を呈するような行動をとったりすることのほうが、日本のイメージ低下につながると話している。
すなわち、慰安婦「強制連行」という虚偽を広めた朝日新聞などではなく、「日本の保守政治家や有識者たち」こそが、「日本のイメージ低下」の主犯というわけである。
朝日「第三者委員会」による「海外有識者」へのインタビューは、聞き取り対象の選定から質問表の作成、インタビュアの選定、結果の整理、公開の仕方までの全過程において、きわめて杜撰、いや意図的に杜撰であった。朝日「第三者委員会」の欠陥は、この「海外有識者」の扱いに最も集約的に現れている。下に関連記事を引いておく。
【歴史戦】「日本は謝罪していない」 在米韓国系団体、意見広告に向け募金呼びかけ 標的は安倍首相の米議会演説
【ロサンゼルス=中村将】米カリフォルニア州に拠点を置く在米韓国系団体が、29日の安倍晋三首相の上下両院合同会議での演説に合わせ、米ワシントン・ポスト紙などに慰安婦問題についての意見広告を掲載しようと、募金の呼びかけを始めたことが分かった。別の韓国系団体は演説を行うとの正式発表後も親韓議員らに反対を表明するよう要請しており、反日活動が目立ってきている。
募金活動を始めたのは「カリフォルニア州韓国系米国人フォーラム」で、「1930年代から40年代にかけて、12歳の少女も含む20万人の若い女性らが日本軍によって性的サービスを強要された」「日本政府は戦争犯罪を否定している」などとし、インターネット上の募金サイトを通じて意見広告掲載の資金を集め始めた。
(以下略)
2015年4月11日付 産経新聞