天安門事件の現場での軍事パレードを含む、中国政府主催の「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」記念式典に潘基文国連事務総長が出席することに「日本政府が懸念を表明しているのに対し、アメリカの国務省は『戦争の犠牲者を敬うことは適切だ』と述べました」と昨日(9月2日)正午前のテレビ朝日ニュースが伝えた。あたかも、日本の懸念を米側が一蹴したかのごとくである。
一方、産経新聞は、「米国務省のトナー副報道官は、……『悲劇的な戦争の多大な犠牲者に敬意を表するのは妥当なことだが、米国は未来や戦後続いた平和と繁栄、アジアとの協力に焦点を合わせている』と述べた。反日感情を高めることのないよう中国を牽制したとみられる。トナー氏は、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が式典に出席することについては『国連が決めることだ』と述べるにとどめた」と報じた。
同じ報道官の発言を報じながら、両者のニュアンスは正反対といってよいほど違う。実際、米国務省のサイトで定例記者会見に当たってみると、明らかに産経の報道が正しい。
テレビ朝日の方は、米国が歴史問題で安倍政権を撥ね付けて欲しい、という願望の表れだろう。事実を願望に合わせて加工するのはジャーナリズムではない。
しかも、以前は朝日の願望通りの発言が国務省から少なからず出たが、韓国の執拗さに対する反発や疲労感、中国の行動一般に対する警戒感の高まりから、このところ米側が軌道修正してきた、というのが注目すべき「ニュース」なのである。朝日のように反安倍願望で原稿を作ると、二重三重の意味で「ニュース」とは言えない代物になる。その好例と思い紹介した。下に関連資料を引いておく。
《テレビ朝日ニュース 2015/09/02 11:53
「潘事務総長の“戦勝式典”出席は適切」米国務省
中国の戦勝記念式典に国連の潘基文事務総長が出席することについて、日本政府が懸念を表明しているのに対し、アメリカの国務省は「戦争の犠牲者を敬うことは適切だ」と述べました。
米国務省・トナー副報道官:「米国は悲劇的な戦争を戦い、命を落とした犠牲者を敬うのは適切だと考えている」
トナー副報道官は1日の記者会見で、「アジア各国が連帯を強め、平和と繁栄の新しい時代をもたらすことを期待する」と述べました。日本政府は「国連はあくまで中立であるべきだ」としていて、訪米した衆議院の大島理森議長も潘事務総長に日本の政府や国民が懸念を示していると伝えていました。》
《産経 2015.9.2
米国務省 抗日記念式典で「未来に焦点を」 反日機運へ配慮 国連事務総長参加についてはコメントせず 抗日70年行事
【ワシントン=加納宏幸】米国務省のトナー副報道官は1日の記者会見で、北京で3日に開かれる「抗日戦争勝利70周年記念行事」に関し、「悲劇的な戦争の多大な犠牲者に敬意を表するのは妥当なことだが、米国は未来や戦後続いた平和と繁栄、アジアとの協力に焦点を合わせている」と述べた。反日感情を高めることのないよう中国を牽制したとみられる。
トナー氏は、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が式典に出席することについては「国連が決めることだ」と述べるにとどめた。潘氏の出席をめぐっては、日本政府が国連の中立性の観点から不快感を表明している。
米政府はオバマ米大統領の代わりにボーカス駐中国大使を行事に出席させる。》
《U.S. State Department
Mark C. Toner, Deputy Spokesperson
Daily Press Briefing
Washington, DC
September 1, 2015
……
QUESTION: Question on Japan.
MR TONER: Sure.
QUESTION: So the lower house speaker, Tadamori Oshima, met with UN Secretary-General Ban Ki-moon yesterday, and Japan has been critical about Ban Ki-moon, the secretary-general, going to China to attend the 70th anniversary of the war ceremonies, saying that it undermines the neutrality of the UN. Do you agree with that assessment?
MR TONER: That it undermines the neutrality of the UN for --
QUESTION: By attending these ceremonies.
MR TONER: For the UN – we’ve been very clear about our perspective on this commemoration event that’s taking place tomorrow, I think, in Beijing. We think it’s appropriate to honor the tremendous sacrifices of those who fought and died in that tragic war. But our focus – just as we stated on VE Day, our focus is on the future and our focus is what happened after the war, where we’ve seen a sustained period of peace, prosperity, partnership with Asia. And we want to see that continue to grow and solidify and bring a new era of peace and prosperity.
……
QUESTION: What do you believe the role of the UN is in commemorating historical events?
MR TONER: Well, that’s for the UN to decide. Our – I think the UN is – can speak to how it – what role it wants to play. It’s a body comprised of all the nations of the world. I think it stands for the fact that all nations can come together in the pursuit of dialogue to discuss issues of importance and vital interests of the world. And so what the UN symbolizes I think speaks for itself. ……》