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2017.11.22 (水) 印刷する

アラスカLNGを中国に先取りされていいのか 赤祖父俊一(米アラスカ大学名誉教授)

 電気は日本の将来にとって最も重要なエネルギーになる。日常生活は電気に頼り、日本製品は、国内、国外用とも電気なしには作れない。自動車も将来は、電気で走らせることになりそうだ。電気エネルギーの必要性はますます高くなる。
 電気は発電所で作られるが、そのエネルギー源は温室効果ガスの排出量が比較的少ない天然ガスが主流になっている。特に日本では東日本大震災以降、原発への反対論が強まっており、他に有力な代替エネルギー源が見当たらないようなら、日本にとって天然ガスは最も重要なエネルギー源となるであろう。

 ●埋蔵量、位置とも日本に最適
 米国のアラスカには、日本とアジア諸国が約100年は使える天然ガスが埋蔵されている。そのことは、少なくとも30年前からわかっていた。しかも、日米関係は良好であり、供給先としては最も信頼できる。輸送面からも、日本にとっては現在、どの供給地よりも場所が近い。
 ただ、アラスカからの輸入を可能とするには、北極海に達する新たなパイプラインとLNG(液化天然ガス)化する施設が必要となる。日本側が躊躇してきたとすれば、当然それらをすべて考慮したうえでのコストではないか。
 アラスカ州の地元紙「デイリー・ニュース・マイナー」によれば、先日、トランプ大統領が訪中した折、中国側は、日本とアラスカ州政府が長く話し合ってきた開発計画に割って入る形で、パイプラインの設立などに出資する可能性についても申し出たようである。同紙によれば投資額は430億ドルになるという。これは中国側がトランプ氏に提示した総額2500億ドルの貿易投資パッケージの6分の1を占める。

 ●中国の巨額投資には曖昧さも
 もっともこれは中国の常套手段であり、これですべてが決定されたわけではない。AP通信も「中国では、そのような調印式は、しばしば儀式的なものだ。彼らは、既に発表する予定だったり、発表時には断念していたりする購入分も加えている」と書いている。
 とはいえ、日本は国の将来にとって最も重要になるアラスカの天然ガスの供給について、中国に一歩後れを取ったのではないだろうか。
 日本は非公式でも、何か手を打っておくべきではなかったのか。これは天然ガス価格の問題ではない。日本の将来問題、日本の国際政治の問題である。日本の国会では、国の将来とそのエネルギー源の確保が問題にならないのだろうか。
 ついでではあるが、北極海沿岸地区の天然ガスは3大石油メジャーの所有になっている。