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2018.08.22 (水) 印刷する

サイバー戦でも脅威増す「新・悪の枢軸」 島田洋一(福井県立大学教授)

 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が8月19日放送の米ABCテレビのインタビューで、米国の選挙に干渉する恐れがある国としてロシア、中国、北朝鮮、イランの4カ国を名指しし、警戒態勢を取っていると語った。
 ここで思い出すのは、「北朝鮮とシリアの化学兵器コネクション」と題したボルトンの一文である(ピッツバーグ・トリビューン・レビュー、3月11日付)。補佐官に就任する直前に書かれた。
 ボルトンはまず、国連安保理の北朝鮮制裁監視「専門家パネル」の報告書について次のように言及する。「(報告によれば)、北朝鮮は数年にわたり、化学兵器の生産に用いられる物資をシリアに売ってきた。北朝鮮による大量破壊兵器テクノロジーの密輸に関し、この証拠以上に重大なものはない。真に北朝鮮の核計画、大量破壊兵器の拡散を止めようと考える欧米諸国にとって、転換点となるべき情報である」。

 ●ボルトンが名指しして批判
 そして、「国連報告その他の情報に鑑みれば、イラン、中国、ロシアが、北朝鮮からシリアへの化学兵器等の移転に関し、資金面および輸送面で相当程度関わっている」と述べている。ここでもロシア、中国、イラン、北朝鮮が名指しされている。ボルトンにおいては、いわばこの4カ国が「新・悪の枢軸」ということになろう。
 ボルトンはABCのインタビューで、具体的に、攻撃的なサイバー作戦の重要性を強調している。ここは重要なので、言葉通り以下に引用しておこう。
 「我々が望むのはサイバー空間における戦争ではない。サイバー空間における平和である。そのためには抑止の構造を打ち立てねばならない。我々に向けてサイバー作戦を実施したり、実施しようと考えたりしている敵対勢力には、それをやれば自制した場合より遙かに大きな代価を支払うに至ると理解させることだ。それが攻撃的なサイバー作戦が潜在的に極めて重要となる理由だ。単に常に防御的であるだけならば、我々が目指す抑止の構造を作ることは出来ない」。

 ●「専守防衛」では抑止できず
 「単に常に防御的」(simply always on the defensive)、すなわち「専守防衛」に籠もっているようでは、相手を抑止できない、すなわち「サイバー空間における平和」は得られないということである。
 当たり前の認識を、ボルトンらしく簡潔的確に示したものだが、日本でこれを安倍晋三首相が口にしたなら、蜂の巣をつついたような騒ぎになるだろう。
 抑止を「拒否的抑止」と「懲罰的抑止」に分ける日本独特の議論は、「個別的自衛権」と「集団的自衛権」をことさらに分けようとする議論に似ている。攻撃的作戦と抑止は不可分である。日本もそこに踏み込まねばならない。(敬称略)