いよいよ安倍政治の集大成を図るときがきた。
第4次安倍再改造内閣が発足し、自民党執行部も改まった。
安倍晋三首相の自民党総裁任期は、再来年の9月末日までだ。総裁4選があるかどうかはまだ分からない。ならば、まずは残る任期を使って、国家国民のため最大の成果を挙げるよう努めてほしい。
新内閣には、2つの大きな国家的、国際的行事が控えている。
第1は、10月、11月と続く、今上陛下の即位の礼と大嘗祭である。即位の礼は、世界中の国から多くの要人が集まる。日本史上、最大の祝典となるだろう。大嘗祭は、天皇一世一代の祭祀である。
第2は、来夏の東京五輪・パラリンピックだ。極めて暑く、台風が襲来するかもしれない中での開催となる。
いずれも万全の準備のもと、執り行わなくてはならない。その重い責任を新内閣は負っている。
●憲法改正を国民運動のうねりとともに
同時に、国政の停滞は許されない。
外交・安全保障、社会保障、経済など重要課題は山積している。だがこれらは、誰が首相になっても、否応なく直面する問題である。
安倍首相がこれらの問題に取り組むべきことはもちろんだが、安倍首相にしか出来ない課題にも果敢に挑戦してもらいたい。
それは、戦後日本が等閑に付してきたが、もう先送りできない懸案だ。我が国の「国のかたち」に関わる、憲法の改正と皇位継承の安定化策を講ずることである。
国会で憲法改正案をまとめ、衆参各院で3分の2以上の勢力を集め、憲法改正の発議へもっていくには、国会の一会期では難しく、おそらく二、三国会が必要だろう。首相がこれから2年間のうちに憲法改正を実現したいのであれば、10月召集予定の臨時国会から、憲法改正の具体的な中身に関する議論に入ることが望ましい。
首相は新内閣が発足した11日夕の記者会見で、憲法改正について自民党一丸となって論議を進めるとした上で、「困難でも必ず成し遂げたい」と語った。
その決意やよし。自民党は国民政党を自任しているはずだ。首相は先頭に立って憲法改正の必要性を訴え、国民運動の大きなうねりをつくるべきだ。
●9条と緊急事態条項は喫緊の課題
憲法改正運動に、内閣や首相、閣僚がかかわってはいけないということなどあり得ない。鳩山一郎内閣当時の昭和31年、議員立法によって憲法調査会法が成立し、内閣に憲法調査会が設けられた。岸信介内閣から池田勇人内閣にかけて機能していた事実もある。
日本国憲法は、内閣や首相、閣僚が憲法改正を訴えることを禁じてなどいない。「憲法改正問題は国会や政党でしか扱えない」という左派政党の宣伝にだまされて及び腰になってはいけない。
自民党が憲法改正をリードしなければならないのはもちろんだ。首相は総裁として党執行部を叱咤し、今度こそ歩みを速めるべきだ。憲法改正に消極的な与党公明党に対する働きかけも怠ってはならない。
日本をとりまく安全保障環境は厳しさを増す一方だ。東日本大震災以来、日本列島は地震・噴火の時代に入ったともいわれる。
自衛隊をめぐる憲法第9条や、緊急事態条項の創設は喫緊の課題だ。
●男系男子の皇位継承貫け
皇位継承の安定化は、日本の国柄、国体に関わる。天皇を戴く日本の永続性を保つため、避けては通れない課題だ。
皇室典範は第1条で「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と明確に定めている。この条文は、皇室の伝統とそれを尊重する日本国憲法に則って定められていると解すべきだ。
今上陛下と、皇弟である皇嗣、秋篠宮殿下の次の世代の男性皇族は、悠仁親王殿下お一方である。皇位継承権を持つ男性皇族が、日本の歴史上、最も少なくなっている。皇室、日本の危機そのものといえる。
今上陛下の御代は始まったばかりだ。悠仁親王殿下が皇位に即かれた暁には、21世紀の後半かなりの時期まで在位されることが期待される。
それでも、皇位継承の安定化策を講ずる問題は、待ったなしの段階にきていると考えなくてはならない。
●旧宮家からの皇族復帰を
悠仁親王殿下が将来ご結婚され、皇子を多く儲けていただきたいが、次世代の男性皇族がお一方では、プレッシャーが大きすぎ、お妃候補となる女性が二の足を踏みかねない。13歳の悠仁親王殿下がご成人されるよりも前に、皇位継承権者を増やし、皇統の幹を太くしておくことが欠かせない。
初代の神武天皇から第126代の今上陛下まで、一度の例外もなく守られてきた男系の継承(万世一系)を大切にしなければならない。それには、今も皇室の親族である旧宮家の流れをくむ方々の中から、男系男子の何人かに皇族になっていただくことが望ましい。女系継承の容認は、皇統の断絶、新王朝の創始となってしまう禁じ手である。
失った伝統は取り戻せない。保守政治家として安倍首相はその恐ろしさを知っているはずである。
首相は11月に、通算在職日数が最長となる。任期の長さは悪いことではないが、そればかりを誇ることになれば空しい。日本の国柄を守るため動き、青史に名を残してほしい。