公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2019.12.02 (月) 印刷する

バランス欠く日本の英字紙報道 石川弘修(国基研理事)

 10月から11月にかけて行われた天皇陛下の即位に伴う一連の儀式やローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇訪日行事についての日本の英文メディアには、リベラル、左寄りの見方を大きく扱うなどバランスに欠けた報道ぶりが目立った。またかという思いである。連日の日本語報道の陰に隠れているが、外国に与える影響が大きいだけに、看過できない。

 ●即位礼では一方的な批判も
 とりわけ、リベラル左寄りの朝日、毎日両紙は現在、英字新聞を発行していないが、電子版英字報道を行っている。その中で、両紙は大嘗祭について、27億円の公費が使われているのは政教分離の原則に反する疑いあると指摘した。
 また、天皇が即位を宣明する高御座は、首相以下閣僚らが整列する松の間の床よりも高い位置に設営されており、「首相が天皇を見上げるのは主権在民に反するのでは」(毎日電子版)と非難する専門家の声を紹介した。さらに「首相が音頭をとる万歳斉唱は、暗い戦時の慣行を思い起こさせる」(朝日電子版)との意見を取り上げている。
 英字紙のジャパン・タイムズも「秘密に包まれている大嘗祭は伝統を踏襲しているが、論争が多い」と大きな見出しを掲げて否定的な側面を伝えている。
 保守派の産経、読売、日本経済など他の全国紙と比べると、日本の英字メディアは一連の即位礼について批判的な論調が強かった。早速、英ガーディアン紙などは、これに沿った見方を報じている。
 ただ、外国には「世界の多くの戴冠式には秘密の要素が含まれている」(ジョン・ブリーン京都・国際日本研究センター教授)などの意見もある。また、伝統は尊重されるべきという海外の見方もネット情報を通して紹介されており、国内の英字メディア報道も、こうした意見も取り上げてバランスをとるべきだ。

 ●海外発信力の大きさに自覚を
 一方、38年ぶりのローマ教皇の訪日は国内カトリック教徒を中心に大歓迎を受けた。教皇は長崎、広島では原爆反対の演説を行い、ジャパン・タイムズや英文朝日なども大きく取り上げた。
 教皇は福島原発事故の被災者との対談などを通じて、原子力の使用に“分別のある選択”を強く求め、自然エネルギー資源の活用を訴えた。教皇の発言は原発反対派を勇気づけただろうが、メディアとしては、それで事足れりとすべきではあるまい。一方で原発の安全性を高めつつ、国内電力需要や産業の維持のための現実的な政策の必要性について解説するなどの編集を行うべきではないか。
 帰路の機中で教皇は、改めて核抑止力に疑問を投げかけたが、これは宗教指導者の発言である。国の安全保障に責任を持つ政治家には、現実的な選択するしかない国際情勢を解説する必要があったのではないか。
 昨年秋、ジャパン・タイムズは戦時中のいわゆる「徴用工」や「慰安婦」の英語表記を事実に即した表現に改め、国家基本問題研究所もこの英断を強く支持した。しかし現場の一部には、これに反対する声がなおくすぶっているようで、リベラル寄りに“里帰り”する記事が散見される。外国からは日本の声を代表する新聞とみられているだけに、ジャパン・タイムズは編集責任を自覚して欲しい。