公益財団法人 国家基本問題研究所
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今週の直言

石川弘修

【第561回】ジャパン・タイムズの英断を支持する

石川弘修 / 2018.12.10 (月)


国基研理事・企画委員 石川弘修

 

 日本の日刊英字紙ジャパン・タイムズは11月30日、戦時中の「徴用工」や「慰安婦」について、表記を改めるとの異例の発表を行った。同日付の紙面から、徴用工は「戦時労働者」(wartime laborers)、慰安婦は「戦時の娼館で働き、日本兵に性行為を提供した女性で、その意思に反して働いた女性を含む」(women who worked in wartime brothels, including those who did so against their will, to provide sex to Japanese soldiers)とそれぞれ改めた。徴用工や慰安婦が強制的に働かされたという誤解を正すための措置だ。また、12月7日には一ページ大の社告を載せ、新たな用語は「より客観的な見方を反映している」と強調した。歴史を歪める表現の是正を求め、提言や意見広告を発表してきた国家基本問題研究所は、同紙の英断を全面的に支持する。

 ●反発した海外メディア
 11月30日の「編集部からのお知らせ」によると、戦時中に日本企業で働いた朝鮮人の労働形態は動員方法(募集、官斡旋、徴用の3種類があった)や時期によって異なり、これまで一律に使ってきた「強制労働」(forced labor)という用語は誤解を与えかねないものだったと説明した。また、「性奴隷」(sex slave)とさえ表現された慰安婦については、女性の体験は多様で、働いた場所によっても違いがある、と述べている。
 今も「性奴隷」や「奴隷労働」などと表現している英ガーディアン紙など一部の海外メディアは今回の発表に対し、「安倍政権の圧力に屈した」「歴史修正主義だ」などと直ちに非難の声を上げた。外国人記者を中心に結成されている日本外国特派員協会はホームページで「国際的な怒りに火をつけた」と過剰に反応した。
 ジャパン・タイムズは1897年創立の日本最古の英字紙だが、前オーナー時代はその反日的な編集ぶりに「アンチ・ジャパン・タイムズ」とさえやゆされた。昨年6月、オンラインメディア会社ニューズ・ツー・ユー(末松弥奈子代表取締役)に売却され、以来、一年間にわたり、水野博泰編集主幹ら編集幹部が新方針を検討していた。日本にいる外国人記者は大半が日本語を読めず、情報源を英字紙などに頼っているだけに、今回の社告が強いショックを与えたのは間違いない。

 ●国内マスコミは頬かむりするのか
 ジャパン・タイムズの英断は、慰安婦問題をめぐる一連の誤報を謝罪しながら、英文記事では謝罪が明確でない朝日新聞にも一撃を与えたのではないか。海外や国内の英語メディアで大きな論争になっている徴用工、慰安婦の表現問題は、国内の大手新聞やテレビでほとんど報道されていない。黙殺は歴史の歪みを助長する行為である。(了)

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