韓国最高裁が三菱重工業に対しても慰謝料を韓国人の元労働者と元女子挺身隊員に払えと命じる確定判決を下した。日韓両国の先人たちが知恵を絞ってつくった国交正常化の枠組みを根底から覆す判決であり、強く抗議する。今回の判決でも、日本の統治は不法だったとする「統治不法論」が立論の基礎となっている。一方、韓国の文在寅政権はこの判決について評価を下さないまま、国際法を守れと求めた日本の外交当局を批判するという倒錯した反応しか見せていない。
●道義的に対応してきた日本
日本は、1910年の日韓併合条約に基づく35年間の統治は当時の国際法秩序の下で合法だったとの立場で一貫してきた。14年間かかった日韓国交交渉とその結果である日韓基本条約と請求権協定でもその法的立場を守ったが、自由陣営に属する韓国が発展することは日本の国益にかなうという判断もあり、1965年の協定で無償3億ドル、有償2億ドルの提供を決断した。当時の日本の外貨準備高は18億ドルだった。
当時の韓国は外貨準備高が1億3000万ドル、国家予算が3億5000万ドルだった。日本の提供資金を活用して、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を成し遂げた。
日本は法的立場こそ変えないが、道義的立場で謝罪も繰り返してきた。1984年の全斗煥大統領訪日の際、昭和天皇が「今世紀の一時期において、両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾であり、再び繰り返されてはならないと思います」とのお言葉を述べられ、その後、首相などが謝罪発言を続けた。これが日韓友好関係を築いてきた先人らの努力だ。
●国際広報の体制づくりが急務
「統治不法論」に立つ韓国最高裁判決はこれまでの日韓関係をあまりにも無視したもので、到底容認できない。協定で日本は、韓国に置いてきた民間人の財産や、韓国が1952年に一方的に李承晩ラインを設定したために拿捕され死亡した日本漁民らの請求権もすべて放棄した。韓国最高裁はそうした請求権問題を蒸し返し、国交正常化交渉をやり直そうとしている。それが韓国の国益にかなうのか、文在寅政権は冷静に考えてほしい。
日本政府がやるべきは、日本企業の財産権を守ることだ。請求権問題はすべて解決しているのだから、日本企業の財産が侵害されないよう、韓国政府に強く申し入れるべきだ。一番危険なのは、敗訴企業の在米財産の差し押さえ訴訟が、米国で提起されることだ。
国際社会に誤解が広がらないよう、戦時労働動員が反人道的な不法行為でなく、合法的な賃労働だったと、広報しなくてはならない。政府は、歴史認識問題について調査研究する「歴史認識問題研究財団(仮称)」を創設するなど、国際広報の体制を早急に整備すべきだ。(了)