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西岡力

【第562回・特別版】永住許可厳格化の付帯決議が実現した

西岡力 / 2018.12.10 (月)


国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授 西岡力

 

 国家基本問題研究所は12月3日、「入管法(出入国管理法)改正、一般永住の急増を止める付帯決議を」という緊急政策提言を行った。そこでは次のように主張した。
 「平成10年法務省は入管法22条の解釈を変えて、一般永住許可要件を日本在住20年から10年に緩和した。その結果、事実上の移民である一般永住者が9万人から75万人に急増した。そのうち25万人が中国人だ。
 ところが、国会は現在入管法改正案を審議しているが、日本の安全と国益に大きな影響を与える『一般永住』急増問題を取り上げていない。参議院で入管法改正案を審議する中で、一般永住急増の危険性を具体的に取り上げ、付帯決議に『入管法22条の厳格な運用』という文言を入れて、永住者急増を抑えるべきだ。」
 入管法改正案を審議した参院法務委員会は、同改正案が成立した12月8日に付帯決議を採択した。そこでは「政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである」として10項目を列挙した。その第10項目で国基研の提言が実現した。すなわち「近年の我が国の在留外国人数の増加を踏まえ、在留外国人からの永住許可申請に対しては、出入国管理及び難民認定法第22条第2項の要件の適合性について、厳格に審査を行うこと」とされた。問題の深刻さを理解し、このような付帯決議を行った国会関係者の努力に敬意を表したい。

 ●事実上の移民が急増
 国基研は、平成22年に外国人参政権問題の提言(改訂版)で「永住許可要件を厳格化し永住外国人の急増を止めよ」と主張して以来、橋本内閣の平成10年2月にそれまで居住20年だった一般永住申請要件が突然10年に短縮され、事実上の移民と言える永住者が急増していることに警鐘を鳴らし続けてきた。
 平成10年の法務省による要件変更に当たり与党や国会の審議はなく、マスコミの報道さえなかった。財界の一部などが主導した規制緩和の流れに乗った方針転換だったようだ。単純労働者は受け入れないとする平成4年の出入国管理基本計画を事実上骨抜きにする重大な政策転換だった。

 ●永住要件を居住20年に戻せ
 国基研の最初の提言から8年たって、ついに国会が永住者急増への懸念を付帯決議で表明した。この意味は大きい。与党自民党の中ではこの付帯決議を入れる議論の中で、一般永住の急増の持つ危険性に関する認識が広まったと聞く。
 来年4月には、これまで法務省の内部部局だった入国管理局が格上げされて、出入国在留管理庁が新設される。日本の国益、特に安全保障や治安、そして伝統と文化を守り発展させるという観点も十分考慮した総合的な外国人管理が行われることを強く要望したい。また、法務省民事局が管轄する帰化についても同様な観点から見直しがなされることを望みたい。
 まず、平成10年の永住許可申請要件大幅緩和を早急に見直し、要件を居住20年に戻すことだ。私たちも、そのための活発な議論を展開していく考えだ。(了)