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2020.07.01 (水) 印刷する

いまこそ同盟国アメリカに医療支援を 名越健郎(拓殖大学海外事情研究所教授)

 新型コロナ禍で今春深刻化した国内のマスク不足は解消し、4月に1枚80円だったマスクの平均価格は6月末には20円まで下落した。多くの日本企業が大量生産しており、今度は逆に、マスクの過剰生産、過剰在庫が予想される。

政府はこの際、余剰マスクを買い上げて、米国に無償支援したらどうか。米国のコロナ感染者は6月末で255万人、死者12万5000人。新規感染者が再び増加し、1日4万人に上るなど苦境にあえいでいる。東日本大震災での「トモダチ作戦」へのお返しをすべき時だろう。

小池都知事は中国優先

トランプ大統領はマスクを着用せず、マスクを軽視しているが、民主党のバイデン大統領候補は6月26日、「マスクの効用は極めて大きい。自分が大統領になれば、国民にマスクの着用を促す」と述べた。しかし、米国ではマスク不足が続いており、感染が拡大する低所得者層に行き渡っていないようだ。

小池百合子・東京都知事は2月の段階で、都が備蓄してきた防護服33万着を中国に寄付した。この時点で日本国内の不足が指摘されていたのに、知事は中国に大量供与した理由を説明していない。

一方で日本は、米国に医療物資を提供していない。ロシアのプーチン大統領でさえ、最大の感染国である米国にマスクや人工呼吸器を輸送機に積んで提供した。ロシア国産の人工呼吸器は不具合が多く使い物にならなかったが、トランプ大統領は「深い感謝」を表明した。

トモダチ作戦忘れるな

茂木利充外相は6月28日のNHK日曜討論で、「日米関係は史上最良で、かつてなく強固」と強調していたが、とてもそうは見えない。首脳同士の個人的関係はいいが、イージス・アショアの配備中止など懸案が増えてきた。コロナ禍で日米間の交流も凍結された。

日本のメディアが米国の黒人暴動を誇張し、面白おかしく報道するのも気になる。黒人と白人の格差を強調したNHKの報道番組で使用したグロテスクなアニメーションに対し、米国のジョセフ・ヤング駐日臨時代理大使が「侮辱的で無神経」と抗議したように、相互理解に齟齬がみられる。

同盟国としては、今こそコロナ禍で苦境に立つ米国に医療支援を行うべきだろう。東日本大震災で三陸の沿岸地帯が総崩れになった時、米軍は2万5000人の将兵を動員して緊急支援を展開した。「トモダチ作戦」がなかったら、東北の復興は大幅に遅れていたはずだ。

マスク提供のような日常の同盟が機能しなければ、「中国軍の尖閣上陸」「北朝鮮のミサイル発射」といった有事に米国の支援は期待できなくなる。