11月13日、カンボジアのプノンペンで日米韓3国首脳会談が行われ、共同声明が発表された。声明は北朝鮮に対する3国の結束を確認するとともに、中国の一方的な現状変更の試みに反対し、台湾海峡の平和と安定を維持すべきことを強調し、半導体などにおける経済安全保障の重要性に詳しく言及した。
こうした声明に韓国が足並みを揃えることは文在寅政権の時には考えられなかった。日米韓の関係強化は東アジア情勢が緊張を高める中、歓迎すべきことである。だが、このような韓国の変化が本物なのか、韓国主要紙の論調を見る限り、疑問が残る。
習主席の冷淡な反応
韓国大統領室の発表によると、中韓会談でのやりとりは以下のようであった。
尹錫悦大統領が北朝鮮問題に関し、国連安保理常任理事国であり隣国である中国がより積極的な役割を果たしてくれるように期待を表明すると、習近平国家主席は「韓国が南北関係を積極的に改善していくことを希望する」と答えた。
また習主席は、尹大統領の訪韓招請に喜んで応じるが、尹大統領が中国を訪問することを希望すると述べた。(しかし、交互に訪問する慣例に従えば、今度は習主席が訪韓する番である。)
習主席の冷たい反応が伝わってくる。これを報じた15日の東亜日報電子版は「尹『北の挑発に中国の役割期待』 習『韓国こそ南北関係改善を』 韓中の立場の違い明らか」との見出しを立てた。
この記事によると、習主席は「中韓は地域の平和守護と世界の繁栄の推進に重要な責任を負っている」「(両国は)広範囲な利益を共有している」とも述べた。これは、台湾、南シナ海など米中が対立する安全保障分野でも韓中が協力すべきだと強調したものと解釈されている。
また、習主席は「経済協力を政治化し、安全保障の一部とすることに反対する」と述べたが、同記事はその言葉を「尹大統領にグローバルな半導体供給網から中国を排除する米国の中国抑制政策に加わるなという強い警告」だと受け取っている。
なおバランスを保とうとする
この期に及んでも韓国内の論調は、米中間で均衡を取ることを主張する。「バリ島で尹・習会談 韓中関係回復の契機としよう」(中央日報社説=16日電子版)は、見出しからして衝撃的である。日米韓声明の直後に中韓関係を「回復」させたいと言っているのである。
しかし、韓国においてこれは特殊な考えとは言えない。北朝鮮ミサイル情報の日米韓共有に賛成する朝鮮日報でさえ「中国標的の韓米日経済対話新設 対中コミュニケーションも疎かにするな」と14日の電子版社説で主張しているのである。他にも、今回の歴訪結果が「米国一辺倒外交」ではないかという指摘があって、大統領室がそれを打ち消したりしている。対中配慮は広範囲に見られる現象である。
「安保は米国、経済は中国」
習主席は他国首脳に非礼な態度を取ったと報じられている。例えば、フランスのマクロン大統領に「(米国に追従しない)前向きな対中政策」を求め、カナダのトルドー首相には、中加首脳会談に関するカナダ国内の報道について苦言を呈した。
習主席の横柄さが感じられるエピソードであるが、韓国とはインパクトが異なるだろう。中国は韓国に遠慮などなく、韓国は習主席の言葉や反応だけでも不安に陥ってしまう。
巨大な中国のすぐ横で朝鮮半島の国家は生きてきた。中国との関係は非常に古く、その中での経験や記憶が韓国にそうした反応を引き起こさせる。中国に比べて米国との関係はかなり新しいのである。
現在のところ韓国にとっては「安保は米国、経済は中国」が現実であり、米中間でのブレは続くのだろう(了)