河野太郎規制改革担当相は自らの肝煎りで設置した再生可能エネルギーの規制緩和を議論する内閣府のタスクフォース(TF)が廃止に追い込まれた責任を取って、閣僚を辞任すべきだ。
再エネTFの関係資料に中国の国営電力会社のロゴマークが入っていた問題で、内閣府は6月3日に公表した調査結果(報告)で、中国の影響力行使を否定する一方で、再エネTFは本来の権限を越えた運用が行われてきたと指摘した。これを受け、河野氏は4日の記者会見でTF廃止を表明した。
河野氏は「議論の内容そのものには問題がなかったが、一定の成果も挙げたこともあり、ここで廃止する」と述べ、あたかも問題がなかったかのような言い方をした。だが、林芳正官房長官もTF側が他省庁に具体的な政策対応を要求するなど「不適切な点があった」として、河野氏を注意した。
疑い残る中国の影響力行使
深刻なのは、内閣府設置法に基づいて設置された政府の規制改革推進会議の中間答申(令和4年12月と令和5年12月)にTFの議論も「参考」として一緒に配布されていたことである。3日の報告は「中間答申の文書と一体で規制改革推進会議に配布されており、規制改革推進会議の答申の一部と誤解される恐れがあったことは否定できない」としている。
内閣府規制改革推進室側は「規制改革の取り組みを一覧性のある形で国民に分かりやすく示す観点」から「参考」として配布したと説明しているが、説得力に欠ける。報告でも、TFは「法令により付与された所掌事務と権限に基づき政策の調査審議や意見具申等を行う審議会等とは異なり、あくまでも行政運営上の意見交換、懇談等の場として性格づけられるもの」としている。
報告によると、TFに中国の国営電力会社「国家電網公司」のロゴマークが入った資料を提出した公益財団法人「自然エネルギー財団」の大林ミカ事業局長は2011年の財団設立以降、中国(香港を含む)への渡航は11回に及び、そのうち6回は「中国電網公司」または同公司が設立した非営利団体「GEIDCO」に関連するものだった。
報告では、「中国政府等から財団に資金提供が行われていないこと、職員への旅費は財団から全て支給されていることが確認された。このように財団が中国政府等から不当な影響力を行使され得る関係性を有していた事実は確認されなかった」としているが、果たしてそうだろうか。
自民党の経済安全保障推進本部長を務める甘利明前幹事長は「とんでもない大臣が来たら暴走する」と河野氏を批判するとともに、内閣府の調査結果についても「中国との関係はまだ調べが甘いのではないか。もっとしっかり確認してほしい」と注文をつけた。
大林氏は河野氏が外相時代の平成30年に外務省内に設置した「気候変動に関する有識者会合」のメンバーにも入っていた。
防衛相時代の再エネ推進にも問題
これだけではない。河野氏は防衛相時代、地球温暖化対策への取り組みとして自衛隊の全国各地にある施設に対し、令和2年度から可能な限り再生可能エネルギー比率の高い電力を調達するよう指示した。なるべく地元で発電する地元電力会社などから優先的に購入するとしていたが、これに異論を唱えていたのが国民民主党の玉木雄一郎代表だ。玉木氏は自身のネット番組で「一見いいように見えるが、民間と違って防衛施設に対してのエネルギー供給については、相当センシティブに考えていかなければいけない」と疑問を呈した。
玉木氏はその理由として、「『電力安くなるだろう』『再エネだからいいじゃないか』ということを言うかもしれませんが、電力の小売事業者っていうのは当然電力売っていますから、どれぐらい電力使用量があるかわかる。使用量が上がってきたら、有事が近づいてきているじゃないかとか、要は防衛体制を強化したじゃないかというのが、電力の使用量によって活動の内容が一定程度分析できる」と説明した。
玉木氏は事業者が「国内企業でしっかりしたところなら問題はない」としながらも、令和5年度で再エネ率100%となった航空自衛隊防府北基地(山口県)SSAレーダー地区、再エネ率60%だった航空自衛隊小松基地(石川県)の契約事業者は共に、親会社の本社がタイにある。この会社自体に問題があるというのではなく、再エネ至上主義の河野氏に問題があるとする玉木氏は「再生可能エネルギーを推進することと、国家の防衛はどっちが価値が高いかというと、防衛の方が高いと思う。国を守れなかったら再エネもへったくれもない」と強調した。
このように外相、防衛相、規制改革担当相を歴任した河野氏の姿勢に問題があるのであって、単にTFを廃止すれば済む話ではない。(了)