公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2026.09.14 (月) 印刷する

対立持ち越した中印首脳会談 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)

新興国グループ「BRICS」首脳会議に出席するため、中国の習近平国家主席が約7年ぶりにインドのニューデリーを訪問し、9月12日にモディ首相と会談した。BRICS首脳会議では、米国などによる一方的な制裁への批判や、国連改革、多極化の推進などが打ち出され、中国にとっては、米国中心ではない国際秩序の構築を訴える場となった。しかし、中印首脳会談は、関係改善に向けた前向きなものであったものの、国境問題や貿易面の対立が解消したわけではなかった。

関係改善模索も急速な進展なし

両首脳は、中印関係を長期的に発展させていくことで一致し、国境問題についても、緊張を抑え、双方に受け入れ可能な解決に向けて努力する姿勢を確認した。習主席は、両国は互いの発展を脅威ではなく機会と捉え、協力すべきだと訴え、モディ首相は、国境地域の平和と安定が両国関係の発展に欠かせないと強調した。

会談では、人的交流やビジネス連携、人の移動の促進でも一致した。モディ首相は「相互尊重、相互感受性、相互利益」の3原則を提示し、中国側は習主席が「中印はライバルでなくパートナー」など四つの見解を表明した。また、首脳会談に先立つ国境協議では「早期かつ実質的な成果」に向けた議論を進める方針で合意したとされる。さらに、モディ首相は台湾やチベットに関するインドの政策と立場に変更はないと応じたと中国側は報じている。

しかし、モディ首相は対中貿易赤字や市場開放の問題にも言及し、経済面での不満が残っていることが明らかになった。また、ヒマラヤ国境をめぐる対立、中国とパキスタンの関係、インドが米国や日本などとの安全保障協力を続けていることなど、両国の隔たりは依然として大きいことは避けられなかった。インドが中国の外交路線に全面的に同調したこともなかった。さらにモディ首相は「技術や重要鉱物の武器化は共通の進歩を妨げる恐れがある」と懸念を示し、BRICSとしての結束を訴える一方で、重要鉱物の輸出規制を進める中国を暗に牽制する場面も見られた。

総じて、今回の首脳会談は、中印両国が対立をこれ以上深めず、経済や外交面での協力余地を探りながら、関係を安定させるための実務的な話し合いであったものの、急速に友好関係へ転じたことを意味するものではなかったようである。

インド主導でBRICS首脳宣言採択

BRICS首脳会議では「ニューデリー宣言」が全会一致で採択され、中東情勢について最大限の自制を呼びかけ、紛争の拡大や民間インフラ、民生用原子力施設への攻撃に反対する姿勢を示した。イランとアラブ首長国連邦(UAE)の間には中東情勢をめぐる対立があるなか、インドが調整役を務めて合意をまとめた。また、米国を直接名指しすることはなかったが、国際法に反する一方的制裁や世界貿易機関(WTO)ルールに反する措置を批判した。

一方、今回の共同宣言では、ロシアのウクライナ侵攻については触れず、昨年のブラジル開催時の宣言にあった「ウクライナ侵攻に関する各自の立場を再確認」との表現も削除された。これはインドがロシアとの関係を考慮し、あえて言及を避けたものとみられる。(了)