江崎道朗・日本会議専任研究員は2月15日、国家基本問題研究所で「中国共産党と反日国際ネットワーク」について語り、同研究所企画委員と意見交換を行った。この中で、江崎研究員は、中国、韓国からアメリカにも広がる反日ネットワークの背後には、日本や日米同盟を弱体化させる中国共産党の戦略があると指摘、少なくともアメリカの保守系グループの理解を得て連携を進めるために研究成果の英訳に取り組んでいることを明らかにした。
江崎研究員は、九州大学の学生だった1982年、教科書誤報事件が発生、時の宮沢喜一官房長官が「近隣条項」を発表したことに疑問を感じたのがきっかけで、歴史認識問題を調べ始めた。江崎研究員の疑問は、まず背後にあった1)東京裁判史観に行き当たった2)その前提には戦前、戦中のアメリカの対日戦略があることを知った。
一方で、1997年に発売された中国系ジャーナリスト、アイリス・チャンの「ザ・レイプ・オブ南京」の狙いは、単なる日本非難や日本のイメージ悪化ではなく、サンフランシスコ講和条約(1951年調印)に基づく日米同盟の根拠を解体することにある、という。日本では南京大虐殺があったかどうかで議論されているが、アイリス・チャンらの主張は、南京事件が人道に対する罪、つまりホロコーストにあたるというものだ。ジェノサイド条約により、ホロコーストには時効は適用されないので、講和条約で決着していても、南京事件に対する対日賠償を今日でも求めることが出来るという、政治運動である。
組織化される世界抗日運動
同研究員によると、この政治運動を推進しているのが中国系の国民運動団体で、中国共産党や人民日報と連携、世界抗日連合を組織してアメリカで反日運動を展開している。アメリカ人でこれを支えているのがベトナム反戦運動で有名な女優、ジェーン・フォンダと夫だったトム・ハイデン・カリフォルニア州議員らに象徴される、左翼学生運動のグループだ。ハイデン議員は、講和条約で戦後補償問題は決着済みであるにもかかわらず、「ナチスドイツや日本が第二次大戦で侵した罪に関する」被害者は今日でも裁判を起こすことが出来るというカリフォルニア州法の改正を実現した。この改正法に基づき、三井物産をはじめとする日系企業に対し集団訴訟が行われ、シカゴでのクラスアクションでは、要求補償額は1兆ドルに達した。しかし、集団訴訟の背後にある北京の意図に危惧の念を抱いた国防総省やOB,上下両院関係者らが動き、当時のブッシュ大統領が9・11テロ事件の問題もあり、訴訟を起こした退役将校、軍OBらに同調しないとの決断を下し、集団訴訟は下火になった。
また、江崎研究員は、戦前からのアメリカの対日戦略について、相反する流れがあり、一つは1920年代後半に駐中国公使を務めたジョン・マクマリー氏らで、満州事変は日本がアジア共産化を防ぐために戦っている、と主張した。これに対し、カナダの外交官、ハーバート・ノーマン氏(1909年、軽井沢生まれ)や国際的な非政府組織、太平洋問題調査会(略称IPR、1925年ハワイに設立)のグループは、日本は帝国主義的な体質から中国を侵略している専制国家と強調、大きな影響力を持つようになった。これは共産主義の国際組織、コミンテルンの主張そのものである。ノーマンは戦後、マッカーサー元帥の政策顧問を務めている。ノーマンは中国人民を支援する友の会事務局を運営したが、実は隠れ共産党員だった。IPRにはロックフェラー財団が資金提供した。当時のフランクリン・ルーズベルト大統領は、ノーマンやIPRの考え方に基づいて、ヒトラーと手を組んだファシズム国家、日本潰しにかかる。「菊と刀」の著者、ルース・ベネディクトや、コミンテルンの工作員であることが判明したトマス・ビッソンらも含め、この大きな流れは日本の精神的武装解除や皇室の解体など国家体制の解体を目論んだ。その後の公開された外交文書などから「ベノナ文書」が発表され、共産主義の陰謀が明らかにされた。
江崎研究員は「反日国際ネットワークの背後に北京がいる。我々が騙されたら日米関係がおかしくなってしまう」として、少なくともアメリカの保守主義グループの理解と連携を探る方策を考えている、と述べた。 (文責・国基研)