中川恵一・東大准教授は、6月3日、国家基本問題研究所において、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員に対し「放射線の安全基準と医学リスク」などについて述べ、その後意見交換した。
中川准教授は、東京出身、東京大学医学部卒業後、同大医学部放射線医学教室入局、スイス連邦工科大ポールシェラー研究所(PSI)客員研究員を経て、2002年から東大医学部付属病院放射線科准教授、2003年から同緩和ケア診療部長を兼任している放射線医療の専門医である。
福島原発事故では、放射線が原因でないにもかかわらず、余計な心配をして心理リスクを高め「がん」を誘発する、あるいは、避難生活を強いられた結果、生活習慣が大きく変化してしまい、糖尿病等に罹患し、寿命を縮めるという残念なことが起きていると指摘した。
そもそも1ミリシーベルトという数値に意味はなく、平均的日本人の自然被曝量は2ミリ、医療被曝は4ミリで、通常でも合計6ミリは被曝しているという。さらに鉱物資源の豊かな北欧では、自然被曝だけで8ミリあるが、それでも避難することはないのであり、わが国が1ミリにこだわる理不尽を強調した。
また、先生は参加者に対し「日本人男性の何割くらいが「がん」に罹患するか」との問いを発した。答えは3分の2で女性の場合2分の1。いずれにしても半分以上は「がん」に罹る、いわゆる「がん」大国とのこと。それでも多くの日本人は予防に無頓着であり、その原因は多様であるものの、根本には予防医療が不徹底なことにあるとのこと。さらに「子宮頸がん」については、「がん」のリスクはワクチンのリスクを遥かに凌駕するのに、日本人は感情論に流され、ワクチンのリスクばかりに目を向ける傾向にあることを指摘した。
いずれにしても、明確な医学的根拠に基づいて、放射線や「がん」のリスクに対処することが重要なのであると述べた。
(文責 国基研)