国基研の理事でもある東海大学海洋学部の山田吉彦教授は、1月6日(金)、定例の企画委員会で、「アジア海域における海洋安全保障の必要性」と題し、特に南シナ海とインド洋をつなぐマラッカ・シンガポール海峡の重要性などについて語った。
山田教授は、まずマラッカ海峡の通航量が年々増加している傾向や、ロンボク海峡を経由すると3日余計にかかるという地理的な要因などを挙げ、同海峡が日本、中国、インドなどの国々の経済活動にとって重要な位置を占めると述べる。
特に載荷重量トン数で仕向け国、仕出し国ともシンガポールの次に多いのが中国で、他国の数字を圧倒していることから、実はマラッカ海峡を死活的な戦略要衝と見るのは中国であるという。
次に教授は、ソマリア沖の海賊の減少傾向はCTF151など多国籍軍の共同オペレーションの成果であるが、この海域で国際社会の監視の目が届かなくなると、もとの海賊問題が復活すると予測する。他方、ここ数年で東南アジアの海賊発生件数が伸びてきていることを紹介。
これに対し、わが国が主導した「アジア海賊対策地域協力協定」通称ReCAAPの活用が期待されるとのこと。この制度は海賊情報の共有のみならず、通航船舶の把握も可能なことから、ReCAAPで主導的役割を得ることの価値は高いという。
さて、中国にとってマラッカ海峡を手中に収めることが、経済活動にとって喫緊の課題となるが、混乱を引き起こす強引な手段は控えたいというジレンマのため、中国が今後いかなるアプローチをとるかが注目されるとのこと。
最後に、中東、アフリカ東海岸、マダガスカルなどインド洋を取り囲む沿岸国を俯瞰すると、中国の港湾整備事業の拡大傾向が見て取れるという。中国漁船団の受け入れ母港化や商業港湾としての利用のみならず、軍用港湾としても利用できることから、安全保障の観点からも注視すべきと警鐘を鳴らした。
(文責 国基研)