大和総研執行役員・チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は1月13日、国家基本問題研究所企画委員会で、ゲスト・スピーカーとして、米国のトランプ新大統領がもたらす新たな経済政策が日本経済・世界経済にいかなる影響を及ぼすかについて語った。
熊谷氏は、まず就任前からツイッターで一方通行的な感情論を吐露するやり方で、世界の産業界に懸念をふりまいていると述べた。政権の陣容がようやく判明しつつある段階で、確定的なことは言えないとしながら、強いて言うなら短期的には株価が上昇しようとも長期的には世界及び日本の経済に悪影響を及ぼすとの見方を示した。
具体的には、トランポノミクスの好材料(円安・株高要因)としては、大型減税やインフラ投資という短期的景気刺激策、米国への資金還流策、金融規制の緩和、金利上昇などであるが、他方悪材料(円高・株安要因)としては、双子の赤字、米通貨当局のドル安カード、孤立主義、保護貿易主義などがあるという。これら好材料は短期的な影響を及ぼすと思われるものの、長期的には悪材料が効いてくるとのこと。
特に、レーガノミクスの時代と大きく違い経済が大きくグローバル化している現在、今後トランプ政権が保護貿易という手段をとった場合、世界経済の下押し圧力が強まるとのこと。たとえば中国経済の対米輸出40兆円に高額関税がかかると中国GDPが1%落ちる計算で、その煽りを受けた日本経済が落ち込みGDPで0.2%下落が見込まれるという。さらに移民の問題やNAFTAの見直しなど、様々な分野にトランプ政権の舵取りが影響すると予想、その結果わが国経済の被る影響はGDPで0.7%~1.1%マイナスというシナリオもありうるとした。
これに対し、わが国はトランプ政権に自由貿易と日米安保の価値を根気強く説得していくことが肝要であると主張した。
(文責 国基研)