拓殖大学の名越健郎教授は、3月24日(金)、定例の国基研企画委員会にて、「今後の日ロ関係と米ロ関係」について、他の企画委員らと意見を交換した。
名越教授は、1953年、岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業後、時事通信入社。ワシントン支局長、モスクワ支局長、仙台支社長などを経て退社。2012年から現職。国際教養大学東アジア調査研究センター特任教授、時事総合研究所客員研究員。
教授は、まずプーチン政権を概観し、経済が低迷する中、強烈な個性に基づく政権運営により、国民の人気を獲得している状況は今後も暫くは継続すると見る。
日ロ関係であるが、日本にとって対ロ外交は期待と失望の繰り返しであり、先般のプーチン訪日時の首脳会談でも同様の結果であったという。ロシアの主要紙がプーチン外交の大勝利と持ち上げたとおり、ロシア側にとり一方的に有利な会談ではなかったかと評した。
今後の展開として、4月末と9月初めの安倍首相の訪ロ計画があるものの、来年3月のロシア大統領選でプーチン氏が再選を果たすまでは、領土問題進展の望みは薄いのではないかと予想。
他方、米ロ関係であるが、米国側では先の大統領選挙戦でロシア側にサイバー攻撃を働きかけた疑いに関する「ロシア・ゲート疑惑」やマイケル・フリン大統領補佐官の辞任などがあり、またロシア側でもトランプ賛美報道がピタリと止むなど、両国のムードは冷え込んでおり、7月のG20まで首脳同士の接触は望めないだろうと説く。
その上、中距離核戦力(INF)全廃条約に違反してロシアが開発・配備を進めている疑いがある反面、米国は条約を守って廃棄を進め、その結果核兵器のインバランスが生じるという問題を見逃してはならないと警鐘を鳴らした。
(文責国基研)