大和総研常務執行役員の熊谷亮丸氏は3月31日、国家基本問題研究所企画委員会のゲスト・スピーカーとして来所し、ダボス会議の様子を交えながら今後の世界経済と日本経済の見通しなどについて語り、企画委員らと意見交換をした。
熊谷氏はまず、1月に行われたダボス会議の様子について語り、初めて出席した中国の習近平氏が主役とするならば、大統領就任前のトランプ氏が陰の主役であったという。出席者の誰もが直接は触れないが、確実にトランプ氏を意識した発言をする様は、まさに“Elephant in the Room”という表現があてはまるとの自身の感想を述べた。
今回のダボス会議での議論は、世界経済は循環的に回復しつつあるものの、依然として問題は山積、特に格差是正への特効薬がないということが主要なポイントであっという。産業面の「光」であるAIや自動運転技術などの第4次産業革命が人類にメリットをもたらすと同時に、必然的に格差拡大という「影」を生むとも指摘。さらに最低労働賃金を担保するためのベーシック・インカムに関する議論が話題となったが、そのうちわが国にも波及してくると予測した。
さて、トランプ政権の経済政策はいまだ不透明、Brexitの影響も予想しづらい反面、中国経済は着実に鈍化の傾向にある。短期的には、大きな崩れはないだろうが、中長期的には悲観的と見る。中国の成長率が1%落ちると、わが国は0.2%落ちると言われるように、対岸の経済と無関係ではいられない。
そこで、早急に日本が取り組まなければならないことは、欧米の半分にも満たない労働生産性などを上げることであり、そのため、日本人の労働マインドを向上させることが必要と説く。今後、雇用制度の見直しや所得の再配分などの施策を急ぐ必要もあると指摘した。
(文責 国基研)