ジャーナリストの大西康之氏は、11月17日、国家基本問題研究所企画委員会のゲストスピーカーとして来所し、近著『東芝解体 電機メーカーが消える日』の内容を中心に、わが国の企業体質への鋭い視点をもとに多角的な分析を展開し、国基研の企画委員と意見を交換した。
大西氏は愛知県出身の1965年生まれ。1988年、早大法卒、日本経済新聞入社。1998年、欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立、現在に至っている。
大西氏はまず、ビジネスの世界は弱肉強食という前提に立たないと、競争社会で生き残ることは不可能だと説く。特に日本の上場企業には新陳代謝が少ないことを指摘。米国においては、新たに創業した会社が多く、いずれも新しい価値を生み出す力が強いが、他方日本の会社の多くが閉鎖的な古い体質を引きずり価値創造力を弱体化させているのだという。
例えば昨今の日本の電機メーカーに、かつてのような独創的な製品を生み出し、国際競争を勝ち抜く力があるのかと問う。例を挙げれば家電量販店の売り場の1等地では、外国メーカーが陣取る光景が常態化し、たとえ日本人が国内メーカーを好む傾向にあったとしても、売れ筋はコストパフォーマンスに優れる中韓などのメーカーとなり、それが売り場の位置取りに表れるのだという。さらに海外の小売市場では、この傾向が顕著に見られるとのこと。
自動車メーカーはどうか。中国、米国、インドという一大自動車市場ではガソリン車からEVへのシフトが始まっているが、日本の対応は遅いと指摘。ハイブリット車の一時の流行に胡坐をかいているうちに、大胆な方針転換ができていないことが問題とも指摘する。
さて、東芝の原発事業の問題は、買収した米ウエスチングハウス社の倒産が発端だが、同社の「売り」であったAP1000という加圧水型原子炉の欠陥のみならず、契約上の不備など経営上の問題が多数からんでいるという。
このような問題に直面した企業は速やかに危機回避行動をとらなければならないが、国策企業の体質を残す東芝は判断が後手に回り失敗の連鎖にいたった可能性があると指摘した。
最後に、国際社会で日本企業が生き残るためには大胆な新陳代謝が必要で、たとえばスペースXやEV事業のテスラなどのように、奇抜で大胆な発想を、即座に実行できる企業体質への脱皮が肝心なのだと強調した。
(文責 国基研)