4月6日、国家基本問題研究所の企画委員会におけるゲストスピーカーとして、青山学院大学名誉教授の石崎晴己氏が来所し、著書の翻訳を手掛けたエマニュエル・トッド氏について、資料とともに分かり易く説明し、櫻井よしこ理事長はじめ企画委員らと意見を交わした。
はじめにトッド氏の著作をエピソードとともに紹介。『最後の転落』(1976)が博士論文審査待ちの期間(旅行中)に記した書で、その時ソ連崩壊を予言したこと、『新ヨーロッパ大全』(1992)の時に初来日したことなど、他の著作も含め詳しく解説した。特に、『第三惑星』(1983)で「家族人類学体系」を確立し、共産圏と外婚制共同体家族(いとこの結婚を許さない)の分布が世界地図の上で概ね合致するという特徴を見出し、他の地域にも家族体系を対応させていったという。
その結果、同氏は国際社会の全体的構造を家族体系により分類することに成功したという。その特徴を示すと、外婚制共同体家族はロシアや中国という共産圏諸国と親和性があり、内婚制共同体家族(いとこの結婚を許す)はアラブやトルコなどのイスラム圏、絶対核家族(兄弟は不平等)は英・米などのアングロサクソン系、平等主義核家族(兄弟は平等)は仏や南米などラテン諸国、そして直系家族が独・日などに分類される。
このような家族人類学体系を通して国際関係を見たとき、例えば少子化の進行度から旧ソ連の衰退を予測するなど、斬新な視点が提供されるのだと指摘。
さらに、米国のトランプ大統領の出現も予測するなど、興味深い話題は尽きることなく、時間を超過するほど質疑応答も活発に行われた。
石崎氏は、1940年、東京生まれ。青山学院大学名誉教授。仏文学者、翻訳者。早稲田大学大学院博士課程卒業後、フランス政府給付留学生としてナンシー大学留学。2001年、仏政府より学術功労賞(オフィシェ等級)授与、2005年、日本翻訳出版文化賞受賞。サルトルやトッドの研究、著作、翻訳が多数ある。
(文責 国基研)